日本大百科全書(ニッポニカ) 「リシャール」の意味・わかりやすい解説
リシャール
りしゃーる
Jean-Pierre Richard
(1922―2019)
フランスの批評家。マルセイユの生まれで高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)の出身。イギリス、スペインなどで文学を教えたのち、帰国してパリ大学教授。第一著作『文学と感覚』Littérature et Sensation(1954)以来、一貫してテーマ批評の方法に基づくエッセイを積み重ねた。感覚・感情・官能的レベルでの(フロイトの無意識領域におけるといってもよい)意味の核心、すなわちテーマを抽出しつつ、そこから諸テーマの織り成す網目状連鎖とか、有機的統一とかを設定することに、批評の役割をみいだした。『マラルメの想像的宇宙』L'Univers imaginaire de Mallarmé(1961)は、そうした諸テーマの巧みな配列により、マラルメ的世界の出現に立ち会わせてくれる。他の主要著作に『シャトーブリアンの風景』(1967)、『ロマン主義研究』(1971)、『ミクロレクチュールⅠ・Ⅱ』(1979~84)がある。
[松崎芳隆]
『有田忠郎訳『詩と深さ リシャール著作集2』(1969・思潮社)』▽『粟津則雄、渋沢孝輔、天沢退二郎他訳『現代詩11の研究 リシャール著作集3』(1971・思潮社)』