リベルム・ベト
りべるむべと
liberum veto ポーランド語
ポーランドのヤギェウォJagiełło朝時代に、議会の全会一致の原則を守るためシュラフタ(特権的身分)身分に与えられた特権。「自由な不認可権」と訳される。中央議会において、1人の代議員がこの権利を行使するだけで審議が停止され、あらゆる議決を無効にすることができた。1652年の議会で初めて行使され、1718年以降は国家の重大な問題にのみ行使が制限されたが、18世紀前半に乱用されて、国政の混乱を招いた。そのため、多数決原理に基づく「連盟」が結成され、議会の機能を代行した。18世紀後半の国政改革期には多数決原理が導入されたため、この権利の行使は実質上停止し、1791年の「五月三日憲法」によって正式に廃止された。
[安部一郎]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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世界大百科事典(旧版)内のリベルム・ベトの言及
【シュラフタ】より
…こうして強大な経済力と軍事力(私兵)をもつマグナートがポーランド各地に割拠する〈マグナート寡頭制〉が17世紀後半に始まるが,マグナートのなかには国王をしのぐ勢力をもつ者まで登場してきた。 18世紀後半になって王権強化のために改革が始められるが,そのときまず問題になったのが,マグナートの手兵としてセイムで〈リベルム・ベト(自由な拒否権)〉を濫用し,議事妨害を繰り返していた農地をもたないシュラフタの存在であった。身分が閉鎖されてからも,国王は功績の認められる都市民や農民をシュラフタに取り立てる権利をもっていたが,17世紀にはいるとこの権利すらセイムに奪われていった。…
【セイム】より
…臨時セイムの場合は2週間)。 なおポーランドのセイムに関しては〈リベルム・ベト(自由な拒否権)〉が有名だが,これは元来すべての身分制議会にあった制度で,ポーランドに独特なものではない。すべての者が武装権をもち,自力救済権を認められている限り決定は全会一致によるしかないからである。…
※「リベルム・ベト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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