改訂新版 世界大百科事典 「リン鉱」の意味・わかりやすい解説
リン(燐)鉱 (りんこう)
phosphorite
phosphate rock
リンPを主要成分とする鉱物。リンは地殻中に比較的多く存在する元素である。リン酸塩鉱物をつくるが,リン灰石Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)は火成岩の最も普通にある副成分鉱物であって,地殻中のリンの90%以上はリン灰石として存在するという計算もある。そのほかアンブリゴナイトLiAl(F,OH)(PO4)(リチウム資源),モナザイトCePO4,ゼノタイムYPO4などの鉱物として産出する。また有機堆積鉱床,グアノ鉱床,カーボナタイト鉱床も主要なリン鉱石資源である。有機堆積鉱床は海水中に溶けたリンが沈殿してできた鉱床で,世界のリン鉱の80%の供給源である。大陸の古い地塊の周辺部に発達し,アメリカ,モロッコなどに大きなものが知られている。グアノは海鳥糞が熱帯の海岸や島上に堆積したもので,南太平洋のナウル島(ナウル共和国),インド洋のクリスマス島(オーストラリア領)などや南アメリカのペルーなどに知られ,大きいものは厚さ20~30mにも達する。カーボナタイトを伴う鉱床の代表例は南アフリカのものである。アジアではスリランカの鉱床が知られている。日本では沖縄の北大東島,石川県の能登半島で採掘されたことがある。1980年現在の世界のリン鉱石の埋蔵量は345億tであり,主要国はモロッコ184億t,ソ連45億t,アメリカ18億tであった。また96年の世界の生産量は約1億3300万tで,主要国はアメリカ4500万t,モロッコ2100万t,中国2100万tである。
執筆者:嶋崎 吉彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報