日本大百科全書(ニッポニカ) 「ろうそくの科学」の意味・わかりやすい解説
ろうそくの科学
ろうそくのかがく
Lectures on the Chemical History of a Candle
イギリスの物理学者ファラデーの著した科学啓蒙書(けいもうしょ)。1860年のクリスマス前後に、王立研究所において69歳のファラデーが少年少女のために行った講演の内容を編集し、1861年に刊行した。ろうそくの燃焼現象を中心に、次々に手際よく演示実験を見せながら話を展開する方法には、「真理をかぎ分ける」といわれたファラデーの思考法がみてとれる。話はろうそくの炎から始まり、さまざまな化学現象に触れながら、全体としては燃焼にかかわる水素、酸素、窒素、炭素、二酸化炭素といった物質の性質を述べ、最後は人の呼吸とろうそくの燃焼が基本的に同じ種類の化学現象であることを示している。小冊子であるが、一つの具体的なテーマを通して科学に触れさせる手法、また実験によって語らせる手法など、現代でも学ぶべきことは多い。
[高山 進]
『矢島祐利訳『ロウソクの科学』(岩波文庫)』