改訂新版 世界大百科事典 「ロデンバック」の意味・わかりやすい解説
ロデンバック
Georges Rodenbach
生没年:1855-98
フランス語で表現活動をしたベルギーの詩人。はじめ法律家を目ざしたが《ラ・ジュンヌ・ベルジック(若きベルギー)》誌に協力したのを機に文学に専念,同世代のベルハーレンらとともに文壇に登場した。彼は1887年以降パリに定住してこの地で没したが,作品ではつねに母国ベルギーを取り上げた。1892年小説《死都ブリュージュ》によって初めてその存在がパリ文壇に認められ,それとともに,北国の霧に閉ざされ死の影の漂う独特の内面世界を歌う憂愁の詩人として一躍世の注目を浴びるにいたった。その詩風をエドモン・ド・ゴンクールやマラルメが愛したことは広く知られている。10冊を超える彼の詩集のうち,《沈黙の世》(1891),《閉ざされた生活》(1896)の2詩集が代表作とされるが,前者所収の一編《黄昏(たそがれ)》は〈ジョルジュ・ロオデンバッハ〉の作品として明治38年10月の《明星》誌上に上田敏によって訳出され,ここに彼の作品が初めて日本に紹介された。
執筆者:松室 三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報