ゴンクール(読み)ごんくーる

デジタル大辞泉 「ゴンクール」の意味・読み・例文・類語

ゴンクール(Goncourt)

(Edmond Huot de ~)[1822~1896]フランス小説家の兄。弟とともに「ジェルミニー・ラセルトゥー」など、自然主義小説合作。また、日本浮世絵研究紹介にも努めた。
(Jules Huot de ~)[1830~1870]フランスの小説家。の弟で、多くの小説を合作。

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精選版 日本国語大辞典 「ゴンクール」の意味・読み・例文・類語

ゴンクール

  1. [ 一 ] ( Edmond de Goncourt エドモン=ド━ ) フランスの小説家。弟ジュールとともに自然主義文学の先駆者。常に弟と共同で創作を行なう。弟の没後、単独で文筆活動を続け、「歌麿」「北斎」などを著わして、日本の浮世絵の紹介にも貢献した。兄弟の「日記」は、時代のすぐれた裏面史として有名。(一八二二‐九六
  2. [ 二 ] ( Jules de Goncourt ジュール=ド━ ) フランスの小説家。兄エドモンの協力者。合作の「ジェルミニー・ラセルトゥー」は、愛欲にとりつかれた一女中の悲惨な二重生活を描いた生理学的写実小説。(一八三〇‐七〇

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴンクール」の意味・わかりやすい解説

ゴンクール(兄弟)
ごんくーる

兄エドモンEdmond Huot de Goncourt(1822―96)、弟ジュールJules Huot de Goncourt(1830―70) フランスの兄弟作家。エドモンはナンシー生まれだが、4歳で一家がパリに移り住んだので兄弟とも生粋(きっすい)のパリジャンといえる。弁護士の祖父がわずかな土地を購入してルイ16世によって貴族に列せられた家柄だが、兄弟とも強烈な貴族意識をもっていた。兄が内向的で、弟が外向的という対照的な性格だが仲がよく、2人とも初め画家を志すが、一転して文士志望に決める。主として兄エドモンの口述を弟ジュールが筆記し、2人で推敲(すいこう)する方法で、ジュールが梅毒で夭折(ようせつ)するまで多数の作品を合作。しかし、処女作『18××年』(1854)は不首尾に終わり、ジャーナリスト、劇作家としても成功しなかった。そこで、フランス18世紀に関する文献史料渉猟し、『大革命期のフランス社会史』(1854)、『18世紀の美術』(1859~75)、『18世紀の女性』(1862)などの歴史研究書を書き、とくに『マリ・アントアネット伝』(1858)で若干の成功を収めた。

 兄弟は歴史研究の手法で小説を書き、『シャルル・ドゥマイイ』(1860)、『尼僧フィロメーヌ』(1861)、『ルネ・モープラン』(1864)ののち、1865年、自家の女中の二重生活を扱った『ジェルミニー・ラセルトゥー』で世間の注目をひく。さらに『マネット・サロモン』(1867)、『ジェルベゼ夫人』(1869)など、病理学の対象たりうる特異な人物、とくに女性を扱い、自然主義の先駆的手法ともいえる観察と調査を駆使し、2人が「芸術文体」と自負する独特の文章で書いた。しかし、作品はいずれも本筋を離れたわき道の描写が多く、冗漫の感を免れない。弟の死後、エドモンは単独で『売笑婦エリザ』(1877)、『ザンガノ兄弟』(1879)、『シェリー』(1884)などを書くが不成功に終わった。

 兄エドモンは19世紀後半のフランスを風靡(ふうび)したジャポニスム(日本趣味)の先駆者と自負し、日本人の画商林忠正(ただまさ)の協力で、浮世絵研究書『歌麿(うたまろ)』(1891)、『北斎(ほくさい)』(1896)を出版。また兄弟の『日記』(1850~96執筆)は、第二帝政期を含む19世紀後半のフランス社会、文壇の活写として貴重である。なお、エドモンの死後、遺言により、遺産を基金として、在野の「アカデミー・ゴンクール」が設立され、毎年もっとも優れた散文作品を選定して、ゴンクール賞を授与している。

[齋藤一郎]

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百科事典マイペディア 「ゴンクール」の意味・わかりやすい解説

ゴンクール[兄弟]【ゴンクール】

フランスの作家兄弟。兄はEdmond Louis Antoine de Goncourt〔1822-1896〕,弟はJules Alfred Huot de Goncourt〔1830-1870〕。共同創作で著名。ナンシーの名門の出。最初は18世紀の風俗等を研究,《大革命期のフランス社会史》《18世紀の芸術》を書いたが,次いで《ルネ・モープラン》等綿密な資料に基づく社会・風俗小説を発表,パリで身を持ちくずす女中を描いた《ジェルミニー・ラセルトゥー》(1865年)は写実主義の代表作。写実主義の立場から,人格を病理学的にとらえ,近代的文体によってリアルに描いた。弟の死後,エドモンは《歌麿》《北斎》等を書いて日本美術熱をもたらす。兄弟で執筆を始めた《日記》(1887年―1896年)は当時の社会の重要な記録。→ゴンクール賞
→関連項目自然主義ゾラドーデ

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