ロト(読み)ろと(英語表記)lôヘブライ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロト」の意味・わかりやすい解説

ロト
ろと
ヘブライ語

イスラエル民族の族長アブラハムアブラム)の甥(おい)。『旧約聖書』「創世記」によれば、ロト伯父アブラハムとともに古代オリエント世界を転々とする(12~13章)。古代地図上でそれをたどると、いわゆる「肥沃(ひよく)な三日月地帯」の周辺地に位置づけられる。さらに「創世記」によれば、この伯父と甥はやがて別々に遊牧する(13章5節以下)。群れ(とくに家畜)の増加が牧草地の再生力を損わないための、遊牧民の知恵である。ソドム天幕を移したロトは、2人の天使から、神の怒りに触れて町が滅ぼされると警告され、ヨルダン東方の山地に難を逃れる。そこで彼は2人の娘と近親相姦(そうかん)によって2人の子供をもうけ、モアブ人とアンモン人の先祖となる(19章)。ロトは、両民族が定住した土地の最初の居住者と推定される。

[定形日佐雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロト」の意味・わかりやすい解説

ロト
Lot

旧約聖書中の人物。アブラハムの弟ハランの子。モアブ人,アンモン人の先祖。アブラハムに従ってカナンへ移ったが,ベテル付近でアブラハムと別れ,肥沃なヨルダンの谷を選んだ。ここにソドムとゴモラが建設された。ロトはソドムの滅亡に際し,神の使いの警告に従って妻と2人の娘を伴って脱出。妻は警告を破って振返り塩の柱となったが,ロトと娘たちは死海東方の山中に逃れた。娘たちは,かつて睡眠中の父と相姦し,それぞれモアブとベニアミンを生んだ (創世記 12~19章) 。この物語には,アンモンやモアブに対する,イスラエルの優位という歴史的背景があると思われる。ロトは絶えずアブラハムの保護を必要とするほど弱く描かれ,彼と娘たちとの関係は,アンモンとモアブの血筋を不名誉なものにしている。

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