翻訳|Lot
古代イスラエルの族長アブラハムの甥。アブラハムが故郷のウルを離れてカナンの地に移住したとき,同行した。そこで家畜を増やしたロトはアブラハムから別れて山地を下り,ヨルダン低地のソドムに移住して寄留身分となった(《創世記》13)。この町の退廃のゆえに神が処罰を決意したことを2人の神の使いがロトに告げ,その一家がこの町を急いで立ちのくように勧告した。ロトはその妻と2人の娘とでソドムを離れたが,うしろを振り向くなという神の使いの禁令をロトの妻が破って,焼ける町を見たため,塩の柱に変えられたという(同19)。東ヨルダンの山地に着いたロトと娘たちとの間に生まれた2人の子は,それぞれモアブ人とアンモン人の先祖となったと記されている。
執筆者:並木 浩一
ロトの物語は,初期キリスト教時代から美術の題材となった。ローマ郊外,ラティナ街道沿いのカタコンベ壁画(4世紀)には,娘の手をひいてソドムから逃げるロトの姿が描かれている。のちには,《コットン創世記》(5世紀),《ウィーン創世記》(6世紀)などの旧約聖書挿絵や教会堂壁画に〈ロトを酔わせる娘たち〉〈ロトのもとへ行く娘たち〉などの場面が表された。近世以降では,ベロネーゼの《逃げるロト》(1580)などが知られる。
執筆者:浅野 和生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イスラエル民族の族長アブラハム(アブラム)の甥(おい)。『旧約聖書』「創世記」によれば、ロトは伯父アブラハムとともに古代オリエント世界を転々とする(12~13章)。古代地図上でそれをたどると、いわゆる「肥沃(ひよく)な三日月地帯」の周辺地に位置づけられる。さらに「創世記」によれば、この伯父と甥はやがて別々に遊牧する(13章5節以下)。群れ(とくに家畜)の増加が牧草地の再生力を損わないための、遊牧民の知恵である。ソドムに天幕を移したロトは、2人の天使から、神の怒りに触れて町が滅ぼされると警告され、ヨルダン東方の山地に難を逃れる。そこで彼は2人の娘と近親相姦(そうかん)によって2人の子供をもうけ、モアブ人とアンモン人の先祖となる(19章)。ロトは、両民族が定住した土地の最初の居住者と推定される。
[定形日佐雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1981年度の主要国の販売額をみると,アメリカ6372億円,西ドイツ5785億円,スペイン5243億円,フランス3154億円などで,同年の日本の販売額2508億円を大きく上回っている。日本の宝くじと同様に,あらかじめ番号の記入されている抽せん券を購入する方法があるが,変わったものでは,購買者が自分で好きな数字を選び,マークして売場に申し込む〈ロト〉(西ドイツ,フランス等),〈ナンバーズ・ゲーム〉(アメリカ)の方式もあり,日本で導入された〈ナンバーズ〉と同様である。また1回で数億円になる高額賞金のくじがある例も知られている。…
…賞金が当たる富くじは1530年にフィレンツェで行われたものが最初といわれ,たちまち各地に普及した。また,ジェノバで議員を選出する際に採用した抽選方法を起源とするというジェノバ式富くじは賭博性が強く,ロトとも呼ばれて現在も行われている。フランスでは,フランソア1世の許可を得て1520年代から富くじが盛んになった。…
※「ロト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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