ロット(読み)ろっと(英語表記)Lorenzo Lotto

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロット」の意味・わかりやすい解説

ロット(Lorenzo Lotto)
ろっと
Lorenzo Lotto
(1480ころ―1556)

イタリアの画家ベネチア生まれと推定される。20歳ごろまでの足跡は不詳。その活動が記録によって知られる1503年ごろ以降の画家の生涯は、ロレート修道院において労働修士として2年間を過ごしたのち没するまで、一か所に長く定住することはなく、トレビーゾ、ベルガモ、ベネチア、イエージ、アンコーナなど、北イタリアおよびマルケ地方のいくつかの地点を転々とする生活であった。孤独、不安と焦燥、貧困、芸術家としての不遇といった不幸な陰が生涯を覆っている。09年にはローマにあってバチカン宮殿の装飾に携わったことが記録から知られる。アントネッロ・ダ・メッシーナ、ジョバンニ・ベッリーニ、デューラー、ラファエッロら多くの美術家の与えた影響の跡が認められるにもかかわらず、ロットの芸術は、むしろ、その独創性において際だっている。強烈な訴えかけを伴う独特な形式的解決と光と影の用い方とをみせる宗教画(たとえば「サン・ベルナルディーノ祭壇画」1521、ベルガモのサン・ベルナルディーノ・イン・ピニョーロ聖堂)や、対象のやや緊張した心理を巧みにとらえた肖像画は、19世紀末より大きな評価を受けるに至っている。

[西山重徳]


ロット(生産量)
ろっと
lot

ある特定の目的のために集められた材料部品、または製品などの集まりをいう。製造に関しては、その性質上、加工ロット、工事命令ロット、さらに移動ロットに分けられる。また、一つのロットに含まれる個々品物の数または単位量の数をロット・サイズという。さらに、個別生産と連続生産の中間的な形態をロット生産という。この場合、1回の生産量(すなわちロット)をいくらにするかが問題になる。生産の進度管理の便宜上、大部分の部品のロットは、組立ての月産台数に一致するが、加工時間の短い小物部品のロットは、経済的なロットの考え方によって数か月分をまとめて加工することがある。

[玄 光男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロット」の意味・わかりやすい解説

ロット
Lotto, Lorenzo

[生]1480. ベネチア
[没]1556. ロレート
イタリアの画家。初め A.プレビターレに師事し,次いで A.ビバリーニに学んだ。しかし 1509年のローマ行きから,ベルガモ (1526) ,トレビソ (32) ,マルケ地方 (35) などと各地を放浪し,またときどき故郷にも現れている。その作品にも,ラファエロ,コレッジオ,デューラー,また後年にはジョルジョーネ,パルマ・ベッキオらの複雑な影響が認められる。それにもかかわらず,彼の個性はこれらの諸影響のなかにあっても明確で,独特の銀灰色調のもとに細部に拘泥しない素朴な力強さをもつ独自の様式を展開させた。特に肖像画に優品があり,『ジュリアーノの肖像』 (ロンドン,ナショナル・ギャラリー) ,『ルクレツィアに扮した貴婦人像』 (同) などが知られる。 54年からロレートのサンタ・カーサ修道院で過し,2年後同地で没した。

ロット
lot

(1) 1回に生産する特定数の製品の単位。普通には毎日連続して生産するほどの量でないとき,月産または年産のロット数を決めて,不連続に繰返し生産する。原料,設備,人員などからみた最小経済単位が基準。この方式をロット生産といい,個別生産と大量生産の中間形態といえる。 (2) 製品の質を管理するため,同一原料,同一工程で生産されたグループを示す番号。特に薬品,ワクチン,飲料の原液に使用。

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