日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロボット産業」の意味・わかりやすい解説
ロボット産業
ろぼっとさんぎょう
robot industry
ヒトなど生物体の動きや機能のかわりや補助をする機械装置関連産業の総称。日本はロボット生産額や稼働台数で世界一の水準にあり、電子工学、人工知能、材料工学など技術的蓄積も豊富である。このため少子高齢化時代を見据え、介護・福祉、農業、警備・危険作業などの分野でロボット産業の成長が期待されている。
アメリカで「ロボットの父」とよばれるJ・F・エンゲルバーガーJoseph F. Engelberger(1925―2015)が1967年(昭和42)、川崎重工業の招きで講演し日本でロボットブームがおこった。1960年代末に多関節化や電動モーターの開発もあって、決められた動作を記憶して繰り返す「ティーチング・プレイバック型」ロボットが自動車や電子部品産業に導入された。2014年(平成26)7月に経済産業省が公表した「2012年ロボット産業の市場動向調査」によると、2011年の産業用ロボットの世界市場規模は84億9700万ドル(およそ6628億円)。そのうち、日本企業のシェアは50.2%である。
ロボット自体も、ヒトの目や耳にあたるセンサーなどで動作を補正する「フレキシブル型」、さらに状況に応じてロボット自身が判断して動く「自律型」が登場し、複雑な作業をこなすことが可能になった。このため清掃や荷物運びを代替する「移動作業型」、ロボットスーツのような「装着型」、体の不自由な人を運ぶ「搭乗型」などへの応用が有望視されている。一般の暮らしへのロボットの普及に伴い、安全基準づくりも課題になる。2014年2月には、生活支援ロボットの安全性に関する国際標準化規格ISO13482が発行された。
[編集部]