ローカーヤタ派
ろーかーやたは
Lokāyata
インド哲学において唯物論を唱えた学派。ローカーヤタとは「世間に順(したが)う者」の意で、順世派と訳す。仏典では順世外道(じゅんせいげどう)。チャールバーカCaārvāka派ともいう。地・水・火・風の四元素とその活動する場所としての虚空(こくう)のみを実在とし、霊魂や来世の存在を否定し、いかなる行為をなしてもその果報はないと主張する。認識論のうえでは、五官による知覚以外には認識はないとする感覚論的立場をとり、実践生活のうえでは快楽主義を唱えた。また、詭弁(きべん)を弄(ろう)したとも伝えられる。代表的思想家としては、紀元前5世紀ころの自由思想家で六師外道(ろくしげどう)の1人であるアジタがあげられる。学派としては後代まで存続したが、思想的発展はほとんどなかった。バラモン教正統学派からは異端として、最低の思想に位置づけられる。
[松田愼也]
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のローカーヤタ派の言及
【観念論】より
…これが解脱である。 これに対して,チャールバーカ,ローカーヤタ派などと称せられる人びとは,世界も心も物質の所産であると[唯物論]的な考えを表明している。ウパニシャッドの哲人ウッダーラカ・アールニ,原子論を唱えるニヤーヤ学派,バイシェーシカ学派にもそうした傾向が皆無ではないが,それでもなおこの経験世界を迷妄の所産とし,そこからの解脱を希求するなど,全体としては観念論というべきである。…
【順世派】より
…古代インドの[自由思想家]の一人[アジタ・ケーサカンバリン]が説いた唯物論・快楽至上主義の説を奉ずる学派。アジタの四元素説は霊魂の存在を完全に否定するもので,正統バラモン思想の[アートマン]を否定する一方,当時の人々が最も重大視した[業]の報いの有無の問題に関しても,善悪の行為の報いはいっさい否定し,道徳も宗教も必要なしとするものであった。このように来世を認めず,業の報いを否定し,現世の快楽を至上とする思想をサンスクリットでローカーヤタLokāyataと呼び,仏典は〈順世外道〉と訳している。…
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