アジタ(読み)あじた(その他表記)Ajita Kesakambalin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジタ」の意味・わかりやすい解説

アジタ
あじた
Ajita Kesakambalin

紀元前6~前5世紀、仏教興起時代のインド思想家六師外道(ろくしげどう)の一人。唯物論的な説を唱えた。それによれば、人間は地、水、火、風の四元素からなり、死ねば独立実在であるそれぞれの元素の集まりに還元される。死後、人間は空無となり、霊魂も存在しない。この世で行った善・悪の果報もなく、輪廻(りんね)もない。したがって、道徳宗教も必要がない、と主張した。

[宮元啓一 2018年5月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アジタ」の意味・わかりやすい解説

アジタ
Ajita Kesakambalin(Kesakambala)

前6~5世紀頃のインドの思想家。六師外道の一人。唯物論,快楽論を説いた。彼によると地水火風の4元素のみが真の実在であり,これらの元素が存在し活動する場所として虚空の存在を認めた。人間はこれらの4元素から構成されていて,死ねば人間を構成している地は地の,水は水の,風は風の集合に,もろもろの器官の能力は虚空に帰する。人間そのものは,死とともに無となり,身体のほかに霊魂のようなものは存在しない。現世来世も存在せず,善業,悪業の果報も存在しないから,祭祀布施犠牲なども無意味であるとする。彼はこのように旧来バラモン教権威をことごとく否定しさった。

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世界大百科事典(旧版)内のアジタの言及

【弥勒信仰】より

…カルキは未来において人間の寿命が23歳となった末世に,この世に出現して人々を救済すると説かれていた。また弥勒は別称アジタとよばれるバラモンの弟子だとする説もある。本来アジタと弥勒(マイトレーヤ)は別々の存在であったのが,同一視されるようになったという。…

※「アジタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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