改訂新版 世界大百科事典 「アセトンブタノール発酵」の意味・わかりやすい解説
アセトンブタノール発酵 (アセトンブタノールはっこう)
acetone-butanol fermentation
嫌気性細菌の1種であるクロストリディウム属のClostridium butyricum,C.acetobutylicumなどにより糖質からブタノール,アセトンなどを生成する発酵で,同時にエタノール,酪酸,酢酸,炭酸ガス,水素ガスなども生成する。生産菌が酸素によって死滅する性質を有するため,本発酵は無酸素の条件下で行われる。生産物の比率は菌の種類,発酵条件を選択することによって変化し,主として酪酸を生成するようにすることも可能であり,その場合には酪酸発酵と称される。19世紀末に発見されてから溶剤,燃料など化学工業原料の製造法として一時期大規模に実施されたが,石油化学工業の勃興と同時に消失した。しかし最近の石油価格の高騰にともなって,改めて農産廃棄物などからのエネルギー回収の手段として検討が始まっている。
→発酵
執筆者:別府 輝彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報