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石油化学工業 せきゆかがくこうぎょう petrochemical industry

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

石油化学工業
せきゆかがくこうぎょう
petrochemical industry

石油や天然ガスを原料に有機合成化学製品をつくる工業。 1920年代にアメリカに始り,第2次世界大戦後,アメリカをはじめヨーロッパ先進諸国,日本において急速に発展,合成繊維合成樹脂合成ゴムなどの技術進歩に従って,その原料物質を確保するための重要な工業となった。

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デジタル大辞泉の解説

せきゆかがく‐こうぎょう〔セキユクワガクコウゲフ〕【石油化学工業】

石油天然ガスを原料として、燃料油など本来の石油製品以外の、合成繊維合成樹脂などの石油化学製品を製造する工業。

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百科事典マイペディアの解説

石油化学工業【せきゆかがくこうぎょう】

石油または天然ガスを原料とする有機合成化学工業プラスチックなどの合成樹脂,合成繊維原料,合成ゴムなどを生産。日本では,1957年米国から技術を導入,従来他の方法で作られたものが安価,大量に供給できること,独自の新製品を多数生み出したことなどで急速な成長を遂げ,1973年の第1次石油危機1979年の第2次石油危機で打撃を受け,1981年からは不況カルテルを結成するなど困難にあったが,現在なお米国に次ぐ世界第2位の石油化学工業国である。
→関連項目ガス化学工業合成化学工業石油化学プラスチック工業有機化学工業

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世界大百科事典 第2版の解説

せきゆかがくこうぎょう【石油化学工業】

石油化学工業は,ナフサ(粗製ガソリン),天然ガスを原料として,合成樹脂,合成繊維原料,合成ゴムなどを生産する産業で,日本では,化学工業全体の約半分を占めている。石油化学工業は,鉄鋼業,紙・パルプ工業などとともに代表的な素材産業であるが,歴史的にはるかに新しく,第2次大戦後に本格的な発展を遂げている。石油化学工業の製品はきわめて多岐にわたっており,その用途も広範である。したがって,石油化学工業を製品別,用途別に理解することは困難であり,製造プロセス別に整理されることが多い。

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大辞林 第三版の解説

せきゆかがくこうぎょう【石油化学工業】

石油または天然ガスを原料とし、燃料などの石油製品以外の化学製品の合成製造を目的とする化学工業。プラスチック・ゴム・洗剤・繊維、そのほかきわめて多種類の物質を誘導合成する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

石油化学工業
せきゆかがくこうぎょう
petrochemical industry

石油または天然ガスを原料とし、燃料油など本来の石油製品petroleum productを除く化学製品の合成を目的とする化学工業を石油化学工業といい、その製品を石油化学製品(ペトロケミカルスpetrochemicals)という。石油化学工業は現代先進工業諸国における基幹産業としてもっとも重要な地位を占める。その最終製品はプラスチック、合成繊維、合成ゴムなどの高分子製品をはじめ、合成洗剤界面活性剤)、有機溶剤、染料、農薬、医薬など多岐にわたり、これらの合成に必要な各種単量体、中間体などの素材生産が、石油化学工業の中心となっている。[原 伸宜]

石油化学工業の意義と発達史

第二次世界大戦当時まで石炭が化学工業の最大の原料であったが、戦後石炭から石油へのエネルギー転換と並行して、化学工業の主原料も石油および天然ガスへ転換し、石油化学工業は急速な発展を遂げた。もともと有機化学製品の多くは、広義に炭化水素の誘導体とみなすことができ、天然産ガス状および液状炭化水素の天然ガスと石油は、複雑な高分子固体物質の石炭に比べ、原理的にも取扱いの容易さからも化学工業原料としてはるかに有利な条件をもつ。戦後中東地域に世界最大の油田が開発され、各国で石油を大量安価に入手できるようになったため、石炭から石油への原料転換はきわめて自然の成り行きであった。
 石油化学工業発達の歴史は、ガソリン製造法の発展ときわめて関係が深い。20世紀前半に自動車、航空機の発達によりガソリン需要が激増し、原油の蒸留のみによるガソリン(直留ガソリン)の不足、オクタン価向上の要求などにより、とくに1920年代から分解ガソリンの製造が盛んになった。当時は石油重質留分の無触媒熱分解法が行われ、副生する分解ガス中には多量のエチレン、プロピレン、ブチレンなどの低級オレフィン類を含むため、分解ガソリン製造能力の大きいアメリカでは、これを合成化学原料に利用する考えがおこった。歴史的には1920年、スタンダード石油会社(ニュー・ジャージー)が分解ガス中のプロピレンの水和により2‐プロパノール(イソプロピルアルコール)の合成を開始したのが最初である。その後アメリカでは、分解ガス中のエチレンを酸化エチレン(エチレンオキシド)、スチレン、エタノール(エチルアルコール)などの合成原料に利用することも行われた。このように第二次世界大戦前、石油化学工業はアメリカで石油精製副生物の利用を目的として誕生したが、大戦後はむしろ石油または天然ガスそのものを積極的に出発原料として使用する現代の石油化学工業の形態に発展した。
 その背景には戦後の触媒化学、有機合成化学、高分子化学の進歩があるが、とくに大きい動機になったものは高圧法ポリエチレンの出現にあるとみてよい。高圧法ポリエチレンは第二次世界大戦前イギリスで発明されたが、大戦中おもにアメリカで連合軍のレーダー用高周波絶縁体などもっぱら軍需用に生産された。戦後この優れた新プラスチックは、各国の化学工業で最大の目標製品となった。エチレン誘導体にはこのほか酸化エチレン、スチレン、塩化ビニルなど重要な化学製品が多い。初期のポリエチレン製造には、副生分解ガス中のエチレンが利用できたが、戦後はこの事情が一変した。これは、分解ガソリン製造法がさらにオクタン価向上を目的とした接触分解法に進歩したからである。この方法では反応機構に基づき、副生分解ガスにはプロピレン、ブチレンを含むが、エチレンはほとんど含まれていない。このためエチレンは別個に製造する必要を生じ、アメリカでは豊富な湿性天然ガス中のエタン分解(脱水素)により、またヨーロッパや後発の日本ではおもにナフサの熱分解により製造されるようになった。とくにナフサ分解では、主生成物のエチレンのほか、プロピレン、ブチレン、ブタジエンなどの低級オレフィン類やベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)などの芳香族炭化水素が同時に生成する。これらは当然総合的に利用されることになる。近年アメリカでも天然ガスの減産により、ナフサや軽油分解によってエチレン、プロピレンの不足を補うようになっている。一方、戦後の自動車エンジンの性能向上により、原油の蒸留で得られる往時の直留ガソリンは、オクタン価不足のためもはやガソリンとしての資格を欠き、格下げしてナフサとよばれ、この接触改質法により芳香族炭化水素に富む高オクタン価改質ガソリンの製造が発達した。この方法は同時に化学工業原料としてのBTXの生産に応用されるようになった。また天然ガスや石油留分を水蒸気変成して合成ガス(水素、一酸化炭素)に変え、これを合成原料とする化学工業も進展した。このように石油、天然ガスから種々の方法で基礎原料が得られるとともに、有効な新触媒が続々と発見され、高分子工業など各化学工業に必要な単量体、中間体などの新しい製造プロセスの開発が著しく進展し、石油化学工業を発達させていった。
 第一次(1973)および第二次石油危機(1979)による原料価格の高騰により、石油化学工業も大きい影響を受けたが、石油はエネルギー源としてよりも、むしろ化学工業原料としてかけがえのない物資であり、石油化学工業は依然として化学工業の基幹となっている。
 なお、日本の石油工業は1949年(昭和24)に至ってようやく再開されたこともあり、石油化学工業への参入はアメリカ、ヨーロッパ各国に比べて後発で、1957年に開始されたが、現在ではアメリカに次ぐ規模をもつ石油化学工業国となっている。[原 伸宜]

石油化学工業の基礎原料

石油化学工業のもっとも主要な基礎原料の概要は前節に述べたとおりであるが、これを大別すると、低級オレフィン類、低級芳香族炭化水素、合成ガスの三つの系統になる。[原 伸宜]
低級オレフィン類
エチレン、プロピレン、ブチレンなどの低級オレフィン類は、それ自身重要な単量体で、その重合によりポリオレフィン、合成ゴムなどが製造され、同時に多くの脂肪族単量体、中間体の合成原料となる。これらのオレフィン類はナフサなど石油留分の熱分解で得られる分解ガスの低温精密蒸留により分離精製される。ナフサ分解では、とくに需要量の多いエチレンが主生成物となる高温、短滞留時間の条件が用いられる。湿性天然ガスが豊富なアメリカでは、エチレン生成にもっとも有利なエタンの高温熱分解を主としている。また、接触分解ガソリンの製造で副生する分解ガスは、プロピレン、ブチレン源となる。合成ゴム原料として重要なブタジエンは、ナフサ分解で生成するC4留分の抽出蒸留で分離精製されるが、世界的にはブタン、ブチレンの脱水素でブタジエンを合成する国も多い。イソプレンも合成ゴム原料として重要で、これもナフサ分解で生成するC5留分の抽出蒸留で分離精製され、また各種の方法で合成されている。[原 伸宜]
低級芳香族炭化水素
ベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)は各種芳香族化合物の合成基礎原料であり、これらはナフサ分解で副生する芳香族性ガソリン、あるいはナフサの接触改質ガソリンから溶剤抽出によって分離される。改質ガソリンをBTX源とする場合、これをリフォーメトとよぶ。
 キシレンはo(オルト)‐、m(メタ)‐、p(パラ)‐キシレンおよびエチルベンゼンの四異性体混合物として得られ、このうちo‐キシレンおよびエチルベンゼンは超精密蒸留によって分離できるが、沸点が近似しているm‐およびp‐キシレンは蒸留では分離できない。これらはp‐キシレンの高融点(13.3℃)を利用した低温結晶化分離、またはゼオライトによる分子ふるいによって分離される。しかしキシレン中もっとも需要が多いのはテレフタル酸原料のp‐キシレンで、他のキシレン異性体をp‐キシレンに異性化させ、これを主生成物とさせる方式が一般に行われている。
 一方、BTXのうち比較的需要が少ないトルエンは、脱メチル法によりベンゼンとし、あるいは不均化法によりベンゼンとキシレンに転化させることも行われる。[原 伸宜]
合成ガス
合成ガスは水素、一酸化炭素の混合ガスをいい、天然ガスや石油留分の水蒸気変成法で得られる。もともと合成ガスはメタノール合成原料ガスとしてこの名があるが、アンモニア合成などに必要な水素源、オキソ合成に必要な一酸化炭素、水素源などとしても重要である。またメタンは直接、シアン化水素、塩化メタン類、二硫化炭素などの合成原料として使われる。このほか天然ガス、ナフサなどの高温熱分解によりアセチレンが製造された時期があるが、現在ではアセチレン系からオレフィン系への原料転換が多く、石油アセチレンの製造はほとんど消滅した。製鉄工業のコークス炉ガスに含まれるエチレンは、これを回収分離してスチレンなどの合成原料に利用される。[原 伸宜]

石油化学製品

石油化学製品の数はきわめて多いが、このうちもっとも多くの用途、需要をもつものはエチレン系製品である。[原 伸宜]
エチレン系製品
ポリエチレン、塩化ビニルモノマー、酸化エチレン、スチレンモノマー、アセトアルデヒド、エタノールなどが主要な一次製品で、日本ではポリエチレンがエチレン需要の約42%(2007)を占める。これらの一次製品からさらに酢酸、酢酸ビニル、エチレングリコールなどがつくられ、最終的にはポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチック、ポリエステル繊維、ビニロン、合成ゴム、合成洗剤など多くの化学製品となる。[原 伸宜]
プロピレン系製品
エチレンに次いで需要が多いのはプロピレン系製品で、ポリプロピレン、アクリロニトリル、酸化プロピレン、2‐プロパノール、ブタノール、2‐エチルヘキサノール(オクタノール)、アセトン、アクリル酸、グリセリンなどが主要な一次製品で、とくにポリプロピレンとアクリロニトリルが日本のプロピレン需要の約60%(2007)を占めている。これらの一次製品から最終的にポリプロピレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などのプラスチック、アクリル系繊維、合成ゴムNBR、各種有機溶剤、可塑剤などの製品となる。[原 伸宜]
ブチレン系、ブタジエン系製品
ブチレン、イソブチレンからは、ブタノール、メチルエチルケトンなどの溶剤やアルキド樹脂原料の無水マレイン酸などが製造され、ブタジエンは各種合成ゴムの主原料に用いられる。[原 伸宜]
ベンゼン系製品
ベンゼンから誘導される主要な一次製品は、フェノール、スチレンモノマー、カプロラクタム、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、無水マレイン酸などで、これらは最終的にフェノール樹脂、ポリスチレン、アルキド樹脂、エポキシ樹脂などのプラスチックや6‐ナイロン、6・6‐ナイロンなどの製品となる。[原 伸宜]
トルエン系、キシレン系製品
トルエンからの一次製品としてはトリレンジイソシアナートが代表的で、これはポリウレタンの主原料である。キシレンの三異性体からは各種フタル酸が製造され、とくにテレフタル酸はポリエステル繊維の主原料に用いられる。[原 伸宜]
メタン系製品
合成ガスからメタノールを経てホルムアルデヒドが合成され、これは各種熱硬化性樹脂の原料となる。また近年メタノールと一酸化炭素から酢酸が合成され、これが酢酸製造法の主力となっているが、このほかメタノールや一酸化炭素を合成原料とするシーワン(C1)化学が発展してきている。
 一方、水蒸気と一酸化炭素との反応により(CO転化反応)さらに水素が生成し、合成ガスは同時に水素の工業的製造法としてもっとも有力な方法で、石油化学工業ではナフサ、水、空気を原料としてアンモニアを一貫方式で合成している。また、石油から回収される硫黄(いおう)は硫酸製造原料となる。このように石油化学製品は単に有機化学製品のみならず、アンモニア、化学肥料、硫酸などの無機化学製品に及び、現代の人間生活に必要な物資の大部分は石油化学製品が占めているといっても過言ではない。石油化学工業の発展は人類の生活を豊かにするうえで、きわめて大きい影響を与えたといえる。[原 伸宜]

石油化学工業の特徴

石油化学工業は石油工業と同様に、典型的な装置工業であることが特徴で、原料は流体であるため、反応、分離、精製、貯蔵などはすべてパイプで結ばれたそれぞれの装置内で行われる。これら一連の装置の組合せからなるプラントの反応条件の調整、物質移動などはすべて遠隔操作により自動化され、原料から連続的に製品が製造される。石油化学工業の基礎原料はわが国ではナフサ分解により大部分が供給され、この原料から誘導される化学製品はきわめて多い。このため石油製油所と直結するナフサ分解センターを中心に、多くの関連化学工場が一地域に集結して石油化学コンビナートを形成していることも、石油化学工業の一特徴である。これらの各化学工場はパイプラインによりナフサ分解センターと直結して必要な基礎原料を受け、各種の石油化学製品を製造する。またコンビナート内には製油所と直結する火力発電所が設けられ、コンビナートおよび周辺地域の電力を供給している。[原 伸宜]

日本の石油化学工業

日本の石油化学工業は1952年、日本瓦斯(ガス)化学(現三菱(みつびし)瓦斯化学)が新潟の天然ガスを原料に用い、メタノールの合成を開始してその先鞭(せんべん)をつけたが、石油を原料としたものでは、1957年丸善石油(現コスモ石油)が石油接触分解副生ガス中のブチレンから2‐ブタノールの合成を開始したのが最初である。政府は石油化学工業の重要性から、その育成のため、1956年に四日市(よっかいち)、岩国、徳山の旧軍燃料廠(しょう)跡を払い下げて石油化学工業に活用する石油化学企業化計画を決定した。この計画に基づき、1958~1959年にかけて、三井石油化学(現三井化学。岩国)、住友化学工業(現住友化学。新居浜(にいはま))、三菱油化(現三菱化学。四日市)、日本石油化学(現JX日鉱日石エネルギー。川崎)の先発4社が相次いで操業に入り、初めて総合的な形態をもつ石油化学工業が始められた。石油化学工業の規模は一般にエチレン生産能力やエチレン需要量で比較されるが、当時のナフサ分解装置のエチレン年産能力は1基2万トン、日本全体で8万トン(1958)にすぎなかった。当初政府の育成措置もあって、その後各工業地域に石油コンビナートの建設が相次ぎ、同時にナフサ分解装置の大型化によりエチレン生産能力も飛躍的に増大した。1978年までの20年間に、鹿島(かしま)、千葉、川崎、四日市、泉北―堺(さかい)、水島、岩国―大竹、徳山―南陽、新居浜、大分の10地域に、18コンビナートが完成している。一方、ナフサ分解装置のエチレン生産能力は1基当り10万トン(1965)、20万トン(1966)、30万トン(1968)と逐年大型化し、1978年には45万トンプラントが出現した。このためエチレンの公称生産能力は日本全体で約635万トンに達した(アメリカに次いで世界第2位)。日本の石油化学工業は外国技術の導入によって開始されたが、しだいに国産技術も開発され、近年は海外への技術輸出も増加している。
 このように石油危機までの高度成長時代に急成長した日本の石油化学工業も、第二次石油危機以後は原料ナフサ価格の高騰、円レートの変動などの影響を受けてその成長は停滞し、約480万トンに達していたエチレン需要量はその後しばしば400万トンを切る状態となった。設備過剰に起因する構造不況から、国際競争力、輸出能力はしだいに低下して、日本の石油化学工業は転換期を迎え、過剰設備の廃棄が進行してエチレンの公称生産能力は432万トン(1985)に低下した。しかし、わが国基幹産業の一つとして、石油化学工業は各産業部門や消費生活の各部門に必要な資材を供給する重要性が高く、日本の化学工業の産額中に占める石油化学工業の比率は約50%(1984)に達した。1990年代からはアジア経済の回復によりエチレンの輸出量が増加、生産量も上昇して2003年(平成15)現在で年間723万トンの生産能力をもつに至った。[原 伸宜]

石油精製・石油化学と環境問題

日本の経済が高度成長を遂げた1960年代は、環境汚染あるいは公害問題が顕在化した時代でもあった。すなわち、高度成長経済を支えた産業の重化学工業化は、既存の工業地帯に加えて、各地に石油化学コンビナートを誕生させた。それらは石油精製工場を中心として石油化学、製鉄などの工場の集団であり、エネルギーを媒体とする集積の経済的利益を追求した結果であった。資源・エネルギー多消費型産業の高度集積は、必然的に各種廃棄物の集中的発生をもたらし、適切な処理・処分なしに放出されれば、深刻な環境汚染を生ずるもとになる。
 その典型例は三重県四日市の大気汚染であった。既存の工業地帯では、おもな汚染物質が煤塵(ばいじん)であったものが、ここでは主として硫黄(いおう)酸化物であった。日本の輸入原油は硫黄含有量が多く、それから生産される重油はさらに高濃度の硫黄分を含み、その燃焼によって大量の硫黄酸化物が大気中に放出される。四日市喘息(ぜんそく)とよばれた慢性呼吸器症状の多発は、この硫黄酸化物が原因とされた。この種の大気汚染の防除のため、法的規制が新設・強化され、また脱硫などの技術的諸対策が推進されて、今日では硫黄酸化物に係る環境基準はほとんどの地域でほぼ完全達成されている。
 他方、1970年(昭和45)ころから新型の複合汚染である光化学スモッグが問題とされ始めた。その原因物質は、石油精製工程などから排出される炭化水素と、自動車排気などに含まれる窒素酸化物である。光化学スモッグの防除対策として、石油精製プラントその他における炭化水素漏出防止・密封対策が採用され、窒素酸化物の除去には排煙脱硝が普及した。自動車には排気浄化装置が取り付けられるようになった。これらにより、発生頻度は低下したが、まだ根絶されるには至っていない。
 さらに水質汚濁も石油精製・石油化学に由来する環境汚染であるが、法的規制が強化され、また技術対策が進められた結果、湖沼を除いて海域、河川の水質環境は改善されつつある。工場廃水は、油水分離装置、活性汚泥処理、活性炭処理その他の方法で浄化され、排水基準をクリアーして放流されている。
 以上のほか、石油精製や石油化学工場においては緑地帯の設定、騒音や振動の低減などの面でも努力が払われており、環境の物理的保全のみならず、景観を含めて周辺地域との調和が配慮されつつあるのは、製鉄など他の工場と同様である。[冨永博夫]
『森田義郎・吉富末彦著『石油化学とその工業』(1981・昭晃堂)』

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世界大百科事典内の石油化学工業の言及

【化学工業】より

…その歴史は大きく四つの時代に分けることができる。すなわち,(1)イギリス,フランスを中心として酸・アルカリ工業が成立した時期(18世紀後半),(2)ドイツを中心に染料の合成から始まった石炭・タール系有機合成化学工業の成立期(19世紀),(3)アメリカを中心に石油・天然ガスを原料とする高分子化学工業が発達した時期(20世紀前半),(4)石油化学工業の発達した時期(20世紀後半)である。
[第1期 酸・アルカリ工業の成立]
 1760年代に始まるイギリスの産業革命によって繊維工業が急成長したため,18世紀後半には漂白工程の能率向上と漂白剤の安定入手が求められた。…

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