改訂新版 世界大百科事典 「アデニル酸シクラーゼ」の意味・わかりやすい解説
アデニル酸シクラーゼ (アデニルさんシクラーゼ)
adenylate cyclase
細胞膜上に存在し,細胞の多くの生理機能を制御するのに重要な役割を果たしている酵素。基質ATPから環状AMP(cAMP)とピロリン酸の生成反応を触媒し(ATP-→cAMP+ピロリン酸),細胞内cAMPの濃度を調節する。アデニル酸シクラーゼは,外部のさまざまな刺激因子により活性化(または不活性化)される。高等動物において重要な活性化因子はホルモンである。副腎髄質ホルモン(アドレナリン,ノルアドレナリン)や膵臓ペプチドホルモン(グルカゴン)による活性化はよく知られている。これらのホルモンにより酵素の触媒活性は高まり,その結果ATPより生成するcAMPの濃度が上昇し,グリコーゲン分解の促進,および血糖量の上昇がひきおこされる。酵素分子はホルモンと結合するレセプター部分とcAMP生成の触媒機能を果たす部分の複合体と考えられていて,ホルモンとレセプターが結合することによりcAMP合成能が活性化される。多くのホルモンはこの酵素活性を促進するが,インシュリンやいくつかのプロスタグランジンは活性を低下させる。
執筆者:柳田 充弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報