改訂新版 世界大百科事典 「アルモリカン山地」の意味・わかりやすい解説
アルモリカン山地 (アルモリカンさんち)
Massif Armoricain
フランス北西部の山地で,ブルターニュ地方から西部ノルマンディー,バンデ,アンジュー地方にひろがる。アルモールはケルト語で〈海に近い地方〉の意。フランスで最も古い山地のひとつで,先カンブリア系の変成岩類,古生代以後の堆積岩からなり,西北西~東南東の地質構造が卓越する。地形的には第三紀はじめの準平原に由来する小起伏の高原・丘陵をなし,その平均高度は100m余りで低い(最高は標高417mのアバロアール山)。しかし箱形の谷に刻まれて深い山地の様相を示す。大西洋とイギリス海峡にはさまれ,温和な冬と豊かな降水(平均年800mm)の海洋性気候下にある。森林は開拓されて生垣に囲まれた畑地と牧場となり,ボカージュと呼ばれる独特の景観を示す。農家はボカージュの中に散在,孤立して生活し,とくに内陸部では,20世紀はじめまで多くの伝統的な習俗(言語,祭り,髪形など)を純粋に保ってきた。
執筆者:米倉 伸之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報