翻訳|peneplain
侵食輪廻説(しんしょくりんねせつ)において、河食輪廻の最終期に形成される一連の平らな地表で、終地形ともいう。この術語は、アメリカの地理学者・地質学者であったW・M・デービスによって初めて使用されたもので、彼の著書『地理学(的)輪廻』Geographical Cycle(1895)によると、次のように記されている。「岩層の組織にあまり関係なく、侵食基準面に近接していることだけに影響されて形成された、一連のほとんど平らな地表面は、中途で乱(中絶)されない河食輪廻の最終期を特色づけるに相違ない」。この場合ほとんど「平らな」という表現は、定量的に記述されていないが、「どの方向にも、乗馬でトロットでき、自動車ではハイギヤで走行できるほどの起伏」であるという定義を後日表している。
準平原の術語はデービスが創案したものであるが、その着想はそれ以前のアメリカ学派の成果を踏まえている。すなわち、準平原の概念の根底そのものは、アメリカの地形学のパイオニアであったパウエルJ. W. PowellやダットンC. E. Duttonなどにさかのぼる。パウエルは、乾燥地域の地表は海面下まで侵食されないことから、侵食基準面の概念を地形学に導入した。ダットンは侵食基準面の概念に、より正確な内容を与え、デービスが新しい発想を案出する素地を次のように記述している。すなわち「すべての地域の地表は、侵食基準面に向かって低下するように侵食されている。もし侵食期が長く続くならば、それらの地表面は順次侵食され、最終的には基準面に近い位置まで低下する」というものである。
日本列島のように造山帯に属する所には、典型的な準平原は発達しがたいといわれている。ブラジル高原、中国東北部の南に位置する遼東(りょうとう)準平原、北朝鮮西方の楽浪(らくろう)準平原などは、この地形の好例とされている。輪廻説による準平原の形成は、原地形が形成されてから地盤運動が静止・緩慢であること、または地盤の隆起量だけ海面が上昇することなどを前提としている。したがって、長い地質時代にわたって造陸運動を受けた地域にその形成可能条件がある。地盤の隆起が著しい造山帯や乾燥地域や寒冷地域、気候変動や地盤運動の様式変化がたびたび繰り返された地域などでは、準平原の形成機構の研究は、今後に残されている。
[有井琢磨]
アメリカの地形学者W.M.デービスが提唱した浸食輪廻(りんね)説において,その終末期に現れる広域の小起伏面。〈平たんな堆積平野に準ずる〉という意味だが,この場合は古期の岩層やかつて山地をつくっていた複雑な地質構造が長い間の浸食削剝の時期を経過してつくられる平たん面またはゆるやかな波浪状の小起伏面である。したがって浸食平野であり岩石平野の一種であり,浸食基準面である海面に限りなく近い位置まで削られ低められた地形であるが,現在形成中のものは見あたらない。それに近い例としてアメリカ合衆国アパラチア山地東側にあるピードモント準平原があげられるが,すでに開析が始まっており現生ではない。ケニア,コンゴ民主共和国などアフリカ大陸の内陸部には大陸台地の形で第三紀に削平されて形成された先カンブリア界を切る準平原が広域に認められる。これらの準平原上には残丘の一種であるインゼルベルク(島状丘陵)の岩山が点在する。
日本の山地の定高性の山稜や山頂平たん面について,地形を復原して小起伏面を想定し,これらを準平原遺物といったりするが,厳密な意味の準平原ではなく前輪廻の老年山地の一部と考えられる程度のものである。
執筆者:式 正英
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