日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンジュー」の意味・わかりやすい解説
アンジュー
あんじゅー
Anjou
フランス西部の歴史的地方、旧州名。主としてメーヌ・エ・ロアール県に相当する。旧州都のアンジェ付近でいくつもの河川が合流し、マイエンヌ川、サルト川は合流してメーヌ川になり、さらにロアール川に流れ込む。主要道路はこれらの河谷に沿っている。西部は湿潤気候を利用した牧草栽培による牧畜が盛んであり、東部はブドウをはじめ果樹、野菜、花卉(かき)栽培が卓越する。アンジェは商工業の中心地である。
[高橋伸夫]
歴史
1世紀の初めごろからケルト人が植民し、ローマ帝国の支配を受けたが、フランク人によって征服された。9世紀に入ってカペー家の祖先ロベール・ル・フォールRobert le Fort(?―866)がノルマン人の侵入を撃退し、870年伯領となり、アンジェルジェが第一アンジュー家(870~1205)を創始した。この家から、イギリスのプランタジネット朝(1154~1485)が生まれ、イギリス国王がアンジュー伯領を支配した時代(1154~1203)もあったが、1203年フランス国王フィリップ2世は、封建法上の手続によって、イギリス国王ジョン(欠地王)の手から奪回することに成功した。1226年、フランス国王ルイ8世は王子シャルル(1世)にアンジューとメーヌを譲渡したが、その後、バロア家のフィリップ6世が王領地に併合(1328)、ついでジャン2世(善良王)の第2子ルイの公領となった。1482年、国王ルイ11世はふたたび王領地に併合し、その後変わるところはなかった。アンジュー公という称号は16世紀以降も血統親王に付与され、アンリ2世、ルイ14世の王子たちにその例をみることができる。
[志垣嘉夫]