日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンチモン鏡」の意味・わかりやすい解説
アンチモン鏡
あんちもんきょう
antimony mirror
金属アンチモンを磁製皿またはガラスの表面に蒸着し、黒銀色の薄層にしたもの。アンチモンの検出過程に現れる。活栓付き漏斗(ろうと)にアンチモン化合物の試料を入れ、コックをあけて試料を滴下する。試料は亜鉛と希硫酸の反応で発生する水素で還元されて、水素化アンチモンSbH3(慣用名はスチビン)を生成する。これを水素とともに塩化カルシウム管を通して乾燥後、燃焼させ、その炎に冷たい磁製皿をあてると、その表面に金属アンチモンが生成し、光沢のある金属の蒸着膜が得られる。これをアンチモン鏡という。また水素化アンチモンと水素の混合気体を燃焼させることなく、強熱したガラス管を通すと、加熱部の近傍の管壁にアンチモン鏡が生じる。ヒ素鏡と似ているが、光沢に乏しく、次亜塩素酸ナトリウムまたはさらし粉の溶液、過酸化水素のカ性アルカリ溶液に溶けない。ヒ素化合物も同様に反応してヒ素鏡を生成するが、ヒ素は次亜塩素酸ナトリウム溶液に溶けるので区別できる。この検出操作は事故を伴いやすいので注意を要する。
[成澤芳男]