日本大百科全書(ニッポニカ) 「イサパ文化」の意味・わかりやすい解説
イサパ文化
いさぱぶんか
メキシコ南部、チアパス州にあるイサパIzapaを中心に、現グアテマラ市郊外のカミナルフューあたりまで広がった、メソアメリカ先古典期の文化。オルメカ文化と古典マヤ文化とをつなぐ重要な役割を果たした。前者の影響を受けて、祭壇を伴う石碑を特色とし、メソアメリカ特有の暦表記もオルメカから受け継いだ。グアテマラ南部エル・バウルから発見された石碑1号には、紀元後36年にあたる年号が記されている。また、オルメカの神であるジャガー人の顔を変形した長い上唇の神を崇拝したが、これがのち、古典マヤ文化の長鼻の神に変化した。カミナルフューから出土した石彫には、マヤ文字の祖型と考えられる文字記号が記されている。このように、いろいろな点で、形成過程のマヤ文化に重要な刺激を与え、紀元前1世紀に最盛期に達して、カミナルフューのミラフロレス期においては多くの基壇、神殿がつくられたが、紀元後200年ごろまでに衰退して、まもなく登場した古典マヤ文化にその席を譲った。
[増田義郎]