日本大百科全書(ニッポニカ) 「イポリット」の意味・わかりやすい解説
イポリット
いぽりっと
Jean Hyppolite
(1907―1968)
フランスの哲学者。ジョンザックに生まれる。1963年以降コレージュ・ド・フランスの教授。ヘーゲル哲学の研究に打ち込み、『精神現象学』のフランス語訳ならびに精細な研究書を著して評価を確立した。彼がとくにこの著作に注目したのは、それがヘーゲルの初期の諸論文と後年の体系哲学とのちょうど中間を占めるだいじな作品と考えたからである。つまり、若い日のヘーゲルが、宗教や歴史の研究に没頭して獲得した豊富な知的経験を、厳しい反省を通じて概念化していく過程を示すものと理解したからである。
[西村嘉彦 2015年5月19日]
『市倉宏祐訳『ヘーゲル精神現象学の生成と構造』全2巻(1972、1973・岩波書店)』▽『渡辺義雄訳『ヘーゲル歴史哲学序説』(1974・朝日出版社)』