エラヒキムシ(読み)えらひきむし

改訂新版 世界大百科事典 「エラヒキムシ」の意味・わかりやすい解説

エラヒキムシ (鰓曳虫)

プリアプルス綱プリアプルス科Priapulidaeに属する袋形動物の総称,またはそのうちの1種を指す。鰓曳動物門として扱うことも多い。一見ホシムシに似た蠕虫(ぜんちゆう)状の海産動物で,水深10~700mの海底の砂泥中にすむ。体は前体と胴部に分かれ,前体は体内に引き込むことができる。後端には中空の袋が集まって房状になった付属器が1~2本存在する。体の表面には小さなとげと乳頭状突起が不規則に散在し,環節様の多くのくびれがある。口の周囲には鋭いとげが五角形に並び,それが五~七重に配列する。雌雄異体脱皮をして成長する。日本には2種,世界で5種が知られている。エラヒキムシPriapulus caudatusは体長4cmほどで尾部の付属器は1本,口の周囲に五角形に並ぶとげが七重になっている。北海道厚岸の岩の間の軟泥中にすむ。またフタツエラヒキムシP.bicaudatusは体長7cmほどで尾部の付属器は2本,口の周囲のとげは五重になっている。東北地方や四国沖から知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エラヒキムシ」の意味・わかりやすい解説

エラヒキムシ
えらひきむし / 鰓曳虫

袋形(たいけい)動物門プリアプルス綱プリアプルス目の旧和名。体の後端にえら状(房状)の付属物をもつ。この形状からエラヒキムシの名がつけられたものと思われるが、この付属物はえら(呼吸器官)ではないので、近年和名の変更が提唱された。吻(ふん)が長いのでフンムシまたは後端から出る房状の付属物からフサオフンムシがその例であるが、この名も不快感を与えるとの理由で、最近ではむしろ原名のプリアプルスをそのまま使用している。

[鈴木 實]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エラヒキムシ」の意味・わかりやすい解説

エラヒキムシ
Priapulus caudatus

袋形動物門動吻綱トゲカワ目エラヒキムシ科。体幹の長さ約 4cm。吻と尾状付属器をもつ。体幹表面に小棘と乳頭が不規則に生じ,環節状の多くのくびれがある。雌雄異体。海底の軟泥に埋もれて生活する。北海道,大西洋北部から北極海周辺の寒海に分布する。

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