エリクセン試験(読み)えりくせんしけん(英語表記)Erichsen test

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリクセン試験」の意味・わかりやすい解説

エリクセン試験
えりくせんしけん
Erichsen test

板材のプレス加工における成形性を調べるために行われる材料試験。ノルウェーの技術者であるエリクセンAbraham Marthinitts Erichsen(1876―1952)が1912年に発表した試験法で、現在でも広く使用されている。この試験にはエリクセン試験機が用いられ、円板状または帯板状の試験片をしわ押さえとダイスとの間に置き、先端が半球状のポンチを押し込んでいく。試験片の表から裏まで貫通した亀裂(きれつ)の生ずるまでのポンチの進入した深さをミリメートル単位で表し、この数値エリクセン値とよぶ。エリクセン値は同一材質でも板の厚さが厚いほど大きくなり、薄板の材料規格には板の厚さに応じてエリクセン値を規定している。なお、薄板のプレス加工性に関する試験法としてはこのほかにコニカルカップ試験がある。これは、円板状の薄板を円錐(えんすい)形ダイスの中に入れ、中央を球状ポンチで押し込み、試験片底部が割れを生じたときの試験片上縁部の平均直径の値(コニカルカップ値)を求める方法で、これが小さいほど成形性がよいとする。

[林 邦夫・中條祐一]

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改訂新版 世界大百科事典 「エリクセン試験」の意味・わかりやすい解説

エリクセン試験 (エリクセンしけん)
Ericksen test

ダイスとポンチによって,金属の薄板などから継目のない底付きの容器を作るプレス加工を深絞りというが,材料の深絞り性を調べる加工性試験の代表的なものにエリクセン試験がある。試験すべき薄板(直径90mmの円板,または1辺の長さ90mmの正方形,または幅90mmの帯)をエリクセン試験機のダイスとしわ押えの間に挿入し,半球状のポンチで上方から押す。カップ状に膨らんでいく板の下面頂部に亀裂が生ずるまでポンチを押し込み,そのときの深さをmm単位で測定した数値をエリクセン値と呼ぶ。この値が大きい材料ほど破壊を起こさずに変形する能力が大きく,深絞りがしやすい。
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百科事典マイペディア 「エリクセン試験」の意味・わかりやすい解説

エリクセン試験【エリクセンしけん】

金属薄板の深絞り(プレス加工の一種で,金属の薄板などから継目のない底付きの容器を作る加工法)性を調べる試験。JISで試験方法を規定。両面ワセリンを塗った所定寸法の試験片をエリクセン試験機のダイス(穴のあいた基台)上に置くか,ダイスとしわ押えとの間に強くはさみ,その中央に半球状のポンチを押し込んでダイスで絞り出す。試験片に少なくとも1ヵ所の亀裂(きれつ)が生じるまでポンチを進入させ,そのときの深さ(ミリ単位)をエリクセン値と呼ぶ。この値の大きい材料ほど深絞りがしやすい。

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