日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワセリン」の意味・わかりやすい解説
ワセリン
わせりん
vaseline
石油から分離された非結晶性軟膏(なんこう)様物質。化学的には炭化水素類の混合物で、大部分は分岐鎖を有するパラフィン(イソパラフィン)からなり、少量の環状パラフィンを含む。組成や物性は原油によって異なる。日本薬局方には黄色ワセリンと白色ワセリンがあり、白色ワセリンは黄色ワセリンを脱色・精製したものである。液性のものは流動パラフィンであり、結晶性のものは固形パラフィンで、組成は類似している。
ワセリンは中性で、においや味はなく、刺激性もない。また、日光や湿気などによって酸敗することがなく、種々の軟膏基剤、化粧品基剤として繁用されている。欠点は、吸水性がなく、皮膚への浸透性が少なく、粘着性が強いことで、薬用としては創傷面や肉芽面、手足のひび・あかぎれに塗布剤として用いられ、工業的には機械類のさび止めにも使われる。白色ワセリン、さらしみつろう、ステアリルアルコールまたはセタノール、コレステロールを配合した親水ワセリンは、吸水性がよいので主薬の浸透性もよくなる。このほか、精製ラノリンを配合して親水性としたものもあり、粘膜や皮膚の保護剤としても有効である。
[幸保文治]