オツネントンボ(読み)おつねんとんぼ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オツネントンボ」の意味・わかりやすい解説

オツネントンボ
Sympecma paedisca

トンボ目アオイトトンボ科。成虫で冬を越すトンボの1種で,オツネンは「越年」の意。体長 34mm内外,前翅長 21mm内外。体色は淡褐色で銅色斑があり,胸部両側と腹面は白っぽい。前後翅とも前縁に沿って淡褐色部がある。雄の上部付属器は釘抜き形。成虫のままで草間や樹皮下に入って冬を過し,春に交尾を行い,水ぎわのショウブアヤメの葉に産卵する。ヨーロッパから中央アジアを経て中国東北部,日本にまで分布し,日本では北海道から九州にかけてみられる。ほかに成虫で越冬するトンボにホソミオツネントンボ Indolestes peregrinusがある。 (→トンボ類 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オツネントンボ」の意味・わかりやすい解説

オツネントンボ
おつねんとんぼ / 越年蜻蛉
[学] Sympecma paedisca

昆虫綱トンボ目アオイトトンボ科に属する昆虫。体長約37ミリメートル、後翅長(こうしちょう)21ミリメートル。成虫のままで越冬するのでこの名がある。夏の間に羽化した成虫は叢間(そうかん)や樹間で冬を過ごし、翌春水辺にきて、水面にさしかかった柔らかい植物体中に産卵する。北海道から九州に分布するが、北方に多く、大陸では中央ヨーロッパまで分布する。近似種のホソミオツネントンボも同じような生活史をもつが、この種は本州以南、南西諸島に分布し、越冬した成虫は体色が美しい水色に変ずる。ホソミオツネントンボは、厳冬に雪をかぶった小枝の先に止まっていることが観察されている。

朝比奈正二郎


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世界大百科事典(旧版)内のオツネントンボの言及

【アオイトトンボ】より

…アジア,アメリカ,ヨーロッパ,アフリカに約200種が分布している。この科には近似のオオアオイトトンボ(平地の林間にすみ堅い木に産卵),オツネントンボ(褐色で,寒冷地にすむ),ホソミオツネントンボ(体が細く,暖地にすむ)など成虫で越冬する種類がある。【朝比奈 正二郎】。…

※「オツネントンボ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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