オドリバエ(英語表記)dance-fly

改訂新版 世界大百科事典 「オドリバエ」の意味・わかりやすい解説

オドリバエ
dance-fly

双翅目オドリバエ科Empididaeに属する昆虫の総称。アブ科,ムシヒキアブ科などと同じく,短角亜目に属する小型ないし大型の昆虫。独特の配偶行動を行い,交尾の際に多数の個体が一定の空間に集まって群飛し,相手をさがす。この行動は,aerial dance(空中舞踊)と呼ばれ,それぞれの種ごとに特有の形式をもっている。世界中に広く分布し,とくに温帯寒帯の森林に多く見られる。日本には10属1000種以上生息していると推定されているが,そのほとんどは未研究である。成虫の形態は,ムシヒキアブに似ているものなどそれぞれの生息環境に応じて多様に分化している。ほとんどの種は捕食性で体の軟らかい双翅類昆虫などをとらえて体液を吸う。海岸の岩上,湖沼川岸などの水辺,森林内の下草や樹の葉上,地上,樹幹などに生息している。オドリバエ亜科に属する種のなかには,交尾しようとする雄が,雌に,とらえた小さな虫や自分の体の特殊な分泌腺からの繊維状物質で紡いだ小球状の物体をプレゼントする習性をもつものもある。幼虫も捕食性である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オドリバエ」の意味・わかりやすい解説

オドリバエ
おどりばえ / 舞蠅
踊蠅
舞踏蠅
dance flies
empids

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエ群オドリバエ科Empididaeの昆虫の総称。体長1ミリメートルほどの微小種から最大15ミリメートルまでの種が含まれる大きな科である。体は細長く、頭部は小さくてほぼ球状、雄は合眼的、雌は離眼的。口吻(こうふん)は種類によって長短がある。胸部には通常短い刺毛列がある。はねはよく発達し、活発に飛翔(ひしょう)し、とくに生殖時の配偶行動中は群飛するので、和洋ともそれに由来して名づけられた。まれではあるが、はねの退化した種や無翅の種もある。脚(あし)は細いがよく発達し、一般に後脚は長い。前脚がカマキリ同様の捕獲脚の種もある。雄の交尾器は大形で、特徴の発現が顕著なので分類学上重要視される。性的二型の発達はとくに雌で著しく、はねの全形、翅脈相、中脚や後脚の腿節(たいせつ)や脛節(けいせつ)に現れるものが多い。幼虫は細長い円筒状で、頭部はとがっている。土中、腐植物中、蘚苔(せんたい)中に生息するもののほか、湿潤地や水中に生育する種類もある。

[伊藤修四郎]

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