カリウドバチ(読み)かりうどばち

改訂新版 世界大百科事典 「カリウドバチ」の意味・わかりやすい解説

カリウドバチ (狩人蜂)

有剣類Aculeata(獲物を麻痺させたり敵を防御するための刺針をもつハチ類)の中で,子を育てるために巣をつくり,餌として他の昆虫クモを狩って与えるハチ類の総称ベッコウバチジガバチスズメバチの3グループ(上科)を含む。単独生活から社会生活を営むものまでさまざまな段階があるので,ハチの行動や社会進化を研究するうえでもっとも重要なものの一つ。進化に伴って次のような変化が見られる。(1)産卵管の機能 ハチ類の針は,本来,卵を産むための道具であったが,カリウドバチでは,卵は針の付け根の開口部から産み出されるようになった。単独性の種では,獲物を麻酔する道具として用いられ,麻酔によって獲物の体表に卵を産みつけやすくなり,子は安全に獲物を食べることができる。社会性の種は獲物を大あごで狩るため,針は防御の武器に変わった。両者とも腹部第1節(前伸腹節)と第2節の間がくびれて,刺針による攻撃が容易になっている。(2)造巣習性 単独性種は地中枯枝に掘坑する,竹筒などの既存坑を利用する,泥を細工するなどして巣をつくり,中に獲物を蓄える。社会性種は植物の繊維で軽くてじょうぶな紙質の巣をつくる。これは群れの巨大化に貢献した。(3)給食法 単独性種のほとんどは,子の成長に必要な餌の全量を一括して育房に蓄える(一括給餌)。社会性種は,親が産卵後も巣にとどまり,必要に応じて餌を与える(随時給食)。(4)主要な産卵行動の順序 およそ三つの段階に分けられる。多くのベッコウバチ類は,先に自分より大きなクモを1匹だけ狩ってから地中に巣を掘り,獲物を引き入れた後体表に卵を産みつけ,坑口を閉じて完結する(狩り→造巣→産卵)。多くのジガバチ類は,一つの育房に複数の小さな獲物を蓄えるため,狩りに先立って巣をつくっておくほうがつごうがよい。自分より小さい昆虫も狩りの対象になって,利用可能な獲物の種類が著しく増えた(巣→狩り→卵)。ドロバチ科(スズメバチ上科)のハチは巣をつくるとすぐに産卵する。このとき卵を育房の天井から細糸でつり下げ,その後貯食して育房を閉じる。産卵が狩猟に先行することは,一部の種(カバフスジドロバチなど)において随時給食の発達を可能にした。しかし,親は子が成虫になる前に巣を離れるので社会生活は実現しない(巣→卵→狩り)。もっとも進化したスズメバチ科に至って,初めて親子2世代の共存が実現し,親は産卵に,娘は採餌や巣づくりに専念して,ここに社会生活が成立した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリウドバチ」の意味・わかりやすい解説

カリウドバチ
かりうどばち

カリバチ

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