日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
カール(Jerome Karle)
かーる
Jerome Karle
(1918―2013)
アメリカの物理化学者。ニューヨークに生まれる。ニューヨーク市立大学で化学と生物を学び1937年に卒業、1938年ハーバード大学で修士号、1943年ミシガン大学で博士号を取得した。第二次世界大戦中は、シカゴ大学でマンハッタン計画(原子爆弾製造計画)に参加した。戦後、1946年にワシントンDCの海軍研究所に入り、1968年には物質構造研究室の主任研究員となった。その間、メリーランド大学で講義を行っているが、彼はイギリス、ドイツ、カナダなど世界各地で講義を行っている。なお、妻のイザベラIsabella Helen Karle(1921―2017)も著名な結晶学者である。
カールは、1950年から1957年にかけて海軍研究所でハウプトマンとともに、物質の結晶構造の決定に関する共同研究を行った。結晶にX線を照射し、得られた回折像を解析して結晶構造を決定するX線構造解析は、これまでも有力な研究方法として利用されていた。しかし従来の方法は、データの解析に時間がかかり、また結晶の条件などに限界がみられた。彼らは、解析に数学的手法、とくに統計学的手法を取り入れることにより、短期間に直接的に結晶構造を決定する方法(カール‐ハウプトマンの方法または直接法とよばれる)を開発した。この業績により、カールはハウプトマンとともに1985年のノーベル化学賞を受賞した。
[編集部]
『安岡則武著『これならわかるX線結晶解析』(2000・化学同人)』