最盛期あるいは衰弱期の積乱雲から生じる強い下降気流が、地表面とぶつかって水平に吹き出す強い風の先端を結んだ線のことで、水平方向5~50キロメートル、寿命約1時間の現象(小規模擾乱(じょうらん))である。突風前線、陣風前線ともいう。ガストフロントとは瞬間的に吹く強い風gustによる前線frontの意味。ガストフロントが通過すると、数分間に数℃という急激な気温低下と、一時的に数ヘクトパスカル程度の気圧上昇がある。また、強い雨が短時間に降ることがある。積乱雲は強い上昇気流によって発達するが、積乱雲中の氷粒や雨粒が大きくなると、積乱雲中の上昇気流で支えきれなくなる。落下する氷粒や雨粒は下降気流を生じさせ、落下途中で氷粒や雨粒が蒸発する場合は、周囲の空気から昇華熱、気化熱として熱を奪って大気を冷やし、下降気流が強化される。
ガストフロントでは、吹き出している冷たい空気と周囲の暖かい空気とが衝突して上昇気流を生じさせ、新たな積乱雲を発生させたり、竜巻発生の要因となったりする。ガストフロントの積乱雲の前面上部に水平に伸びたロール状の濃い雲がアーチ状にみえることがある。局地現象であるため事前の予測はむずかしいが、このアーチ雲とよばれる雲ができれば、その大きさや動きからガストフロントの規模や移動方向を推定できる。竜巻に比べると被害が小さいとされるが、通過時には突風を伴い、2012年(平成24)8月6日に新潟県で発生したガストフロントは、樹木やコンクリート製の電柱が倒れ、被害範囲は幅19キロメートル、長さ34キロメートルに及んだ。
[饒村 曜]
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