GaAsの小さな試料に直流電界を加えていき,あるしきい値を超えると,マイクロ波領域で発振が起こることをJ.B. Gunnが発見した.この発振動作は,半導体のバンド構造による直接の効果である.つまり,k空間におけるエネルギー値が,図に示したような物質があったとき,電界が弱い場合は,電子はエネルギーの低い1の伝導帯中で伝導しているが,高電界になると,2の谷のほうでの伝導が起こるようになる.この場合に,有効質量が m1* < m2* であると,移動度が μ1 > μ2 であるために,実効的に抵抗が高くなったことになり,負性抵抗が起こる.Gunnの観測した発振はこの負性抵抗によるもので,このような原理で動作するマイクロ波発振素子をガンダイオードという.この発振が観測されるためには,μ1 が μ2 より十分大きいこと,また,1と2のエネルギー差ΔEが,その半導体のバンドギャップより小さいことなどが必要である.ガン発振は,GaAsのほかに,InPやCdTeなどでも観測されており,発振器として従来のクライストロンなどに比べて,小型軽量で,電源が簡単などの利点がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ガン効果を利用し,マイクロ波帯の発振をするダイオード。n型のヒ化ガリウムGaAsやリン化インジウムInPなどに,数kV/cm程度の強い電界を加えると,周波数がダイオード中の電子の走行時間の逆数にほぼ等しい発振現象を生ずる。この現象は1963年にガンJ.B.Gunnにより発見され,ガン効果と呼ばれる。発振の物理的機構はリドリーB.K.Ridley,ワトキンスT.B.Watkins,ヒルサムC.Hilsumにより予測されていたように,低エネルギーの有効質量の小さいエネルギー帯中の電子が,高エネルギーの有効質量の大きいエネルギー帯に遷移することによるので,電子遷移デバイスともいう。インパットダイオードよりも出力は小さい。
執筆者:菅野 卓雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「ガン効果ダイオード」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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