クルムス(読み)くるむす(その他表記)Johann Adam Kulmus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルムス」の意味・わかりやすい解説

クルムス
くるむす
Johann Adam Kulmus
(1689―1745)

ドイツの解剖学者。ブレスラウ(現、ブロツワフ)に生まれ、1711年ハレ大学に入学して医学を修め、ライプツィヒストラスブールバーゼルの各大学へ転じ、1719年バーゼル大学を卒業した。1725年ダンツィヒ(現、グダニスク)のギムナジウムの解剖学・物理学の教師となった。1722年に同地で出版した『解剖学図表Anatomische Tabellenは二十数枚の図表について解説した簡単なものであったが、オランダ、フランス、ラテンの各語に翻訳され、版を重ねた。1732年の第3版(アムステルダム刊)をオランダのディクテンGerardus Dicten(1696ころ―1770)がオランダ語訳して出版したものが、杉田玄白(げんぱく)・前野良沢(りょうたく)らの『解体新書』(1774)の底本となった。

[大鳥蘭三郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「クルムス」の意味・わかりやすい解説

クルムス
Johann Adam Kulmus
生没年:1689-1745

ドイツの医者。ブレスラウ(現,ブロツワフ)に生まれ,ダンチヒ(現,グダンスク)で没した。バーゼル大学で医学の学位をとり,ダンチヒで開業し,1725年同所のギムナジウムの博物学教授となった。著書《Anatomische Tabellen》(1722)の蘭訳本(通称ターヘル・アナトミア》)が,74年(安永3)杉田玄白らによって《解体新書》として翻訳刊行された。彼は日本ではよく知られているが,欧米ではあまり知られていない。
解体新書
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「クルムス」の解説

クルムス Kulmus, Johann Adam

1689-1745 ドイツの医師,解剖学者。
1689年3月18日生まれ。ダンチヒ(現ポーランドのグダニスク)で開業,のち教師となり医学と博物学をおしえる。1722年簡約解剖書「解剖図譜」を出版。このオランダ語訳書「ターヘル-アナトミア」が杉田玄白らによって翻訳され,「解体新書」として安永3年(1774)刊行された。1745年5月29日死去。56歳。ブレスラウ(現ポーランドのウロツワフ)出身。バーゼル大卒。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

367日誕生日大事典 「クルムス」の解説

クルムス

生年月日:1687年3月15日
ドイツの医学者
1745年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のクルムスの言及

【解体新書】より

…1774年(安永3)刊。1771年(明和8)の骨ヶ原(小塚原)の腑分けがきっかけとなって,当時《ターヘル・アナトミア》と俗称されたドイツ人クルムスJ.Kulmusの解剖書の蘭訳本(1734刊)を日本訳したもので,江戸の杉田玄白,前野良沢ら蘭学グループが参画したが,良沢の名前は記されていない。これは幕府の出版取締りをおしはかって,もし幕府のとがめを受けたとき,先輩で盟主格の良沢に累を及ぼさないための配慮とみられる。…

【医学】より

…それらの乏しいオランダの知識をもつものが,協力して訳出したのが《解体新書》5巻(1774)で,4年間に11回も原稿を書きかえてできあがったという。原著は,ドイツ人クルムスJohann Adam Kulmusの解剖図譜のオランダ語版《ターヘル・アナトミア》である。この訳業のきっかけを与えたのは,1771年(明和8)3月4日,江戸小塚原刑場であった解剖(腑分け)を,杉田玄白前野良沢中川淳庵が見学し,その際持参したクルムスの図譜の正確なことに驚いて,翻訳をすることに意見が一致し,さらに桂川甫周,石川玄常,嶺春泰,桐山正哲らも加わって集団討議を繰り返しながらできあがったものである。…

【解体新書】より

…1774年(安永3)刊。1771年(明和8)の骨ヶ原(小塚原)の腑分けがきっかけとなって,当時《ターヘル・アナトミア》と俗称されたドイツ人クルムスJ.Kulmusの解剖書の蘭訳本(1734刊)を日本訳したもので,江戸の杉田玄白,前野良沢ら蘭学グループが参画したが,良沢の名前は記されていない。これは幕府の出版取締りをおしはかって,もし幕府のとがめを受けたとき,先輩で盟主格の良沢に累を及ぼさないための配慮とみられる。…

※「クルムス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android