クロツヤムシ

改訂新版 世界大百科事典 「クロツヤムシ」の意味・わかりやすい解説

クロツヤムシ

甲虫目クロツヤムシ科Passalidaeに属する昆虫の総称,またはその1種。クロツヤムシ科は,いずれもその名のように黒色で光沢がある。英名はsugar beetle,bessbug。クワガタムシ科に近縁であるが,触角がひじ状に屈曲せず,先の櫛状部が内方へ巻く。おもに熱帯の森林に生息し約500種が知られる。クロツヤムシAceraius grandisはインド,マレー半島,ボルネオ島,台湾に分布し,体長45mm内外。日本にはツノクロツヤムシCylindrocaulus patalis1種を産するが,その生息地は四国と九州の一部に限られ,いずれも高地ブナ原生林である。体長18mm内外。クロツヤムシ科は成虫幼虫とも朽木中にすみ,幼虫は孔道の中で成虫がかみ砕いた木片を食べて育つ。幼虫は白色円筒形でクワガタムシ科の幼虫に似るが,後脚が退化して著しく小さい。幼虫期間は短く,ツノクロツヤムシでは6~7月に孔道に産卵。8月下旬にはさなぎを経て成虫となる。クロツヤムシ科は退化した後翅と腹部背面をこすり合わせてキ,キ,キと発音する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロツヤムシ」の意味・わかりやすい解説

クロツヤムシ
くろつやむし / 黒艶虫
peg beetles
bess beetles

昆虫綱甲虫目クロツヤムシ科Passalidaeに属する昆虫の総称。熱帯、亜熱帯域に大部分が分布し、一部が温帯域に産し、世界に約500種が知られるが、日本産は1種。体長10~70ミリメートルに達するものがある。ほとんどが名のように黒くて光沢がある。円筒形のものもあるが、長形で平たい種が多い。触角は膝(ひざ)状に折れ曲がらず、巻くことができるので、近縁のクワガタムシ類と異なる。成虫、幼虫とも朽ち木内の同所で原始的な家族生活をし、成虫は幼虫のため材をかみ砕くといわれ、上ばねと腹部背面をこすり合わせて発音する。幼虫も変形した後肢中肢の根元をこすって発音する。日本産のオニツノクロツヤムシCylindrocaulus patalisは、体長約20ミリメートル、太い円筒形で頭に1対の平たい角(つの)突起をもち、四国と九州の山地帯に産する。なお、第二次世界大戦以前は、台湾産のアセライアス・グランディスAceraius grandis(体長40~45ミリメートルで平たい)にクロツヤムシの名を用いていた。

[中根猛彦]


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