シアン化合物中毒

内科学 第10版の解説

シアン化合物中毒(ガス・その他の工業中毒)

(4)シアン化合物中毒
 シアン化合物は金属メッキ,冶金,殺鼠剤,化学薬品の原料に用いられる.中毒の多くは,シアン化塩が燃焼して遊離したシアン化水素(青酸)ガスの吸入による.火災による急性中毒がしばしば発生する.シアンは細胞呼吸酵素系の阻害作用,特にチトクロームC酸化酵素と結合して脳の酸化エネルギー代謝を抑制し中毒を起こす.大脳,線条体,小脳の神経線維の消失を認める.
 シアン化カリウムの最低致死量は200 mgで,瞬時に昏睡となり死亡する.早期は眼や上気道の焼けつくような粘膜刺激があり,頭痛,めまい,錯乱,不安,脱力が生じ,ときに頻脈,血圧上昇,嘔吐,発汗を認める.高濃度では意識消失,痙攣,呼吸障害,徐脈,血圧低下,循環不全,心停止がみられる.慢性症状として記銘力低下,パーキンソニズムがみられることがある.
 診断は呼気や胃内容物の「苦いアーモンド臭」,チアノーゼのない低酸素脳症,全血中・尿中のシアンイオン濃度の上昇を確認する.中毒濃度は0.5~1.0 mg/L,致死量は2.5~3.0 mg/Lである.治療は100%O2を投与し,亜硝酸アミルの吸入,亜硝酸ナトリウム,チオ硫酸ナトリウムやヒドロキソコバラミンを静注する.火災による中毒では,ヒドロキソコバラミンかチオ硫酸ナトリウムを併用する.[熊本俊秀]
■文献
Harris J, Chimelli L, et al: Nutritional deficiencies, metabolic disorder and toxins affecting the nervous system. In: Greenfield’s Neuropathology, 8th ed (Love S, Louis DN, et al eds), pp 675-731, Hodder Arnold, London, 2008.上條吉人:臨床中毒学(相馬一亥監修),医学書院,東京,2009.Prockop LD, Rowland LP: Occupational and environmental neurotoxicology. In: Merritt’s Neurology, 11th ed (Rowland LP ed), pp1173-1184, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2005.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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