日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアン」の意味・わかりやすい解説
シアン
しあん
cyan
炭素と窒素の化合物。シアノーゲン、ジシアン、オキサルニトリルなどともいう。触媒の存在下で、シアン化水素を空気または塩素、二酸化窒素で直接酸化して得られる。金属シアン化物の熱分解や、硫酸銅(Ⅱ)水溶液とシアン化アルカリ水溶液との反応によっても得られる。無色の気体。苦扁桃臭がある。N≡C-C≡Nの直線分子。青色の炎をあげて燃える。酸素と混合して燃焼させると、炎の温度は約5000℃にも達する。水溶液は分解してシアン化水素、シアン酸を生成し、アルカリ性溶液でシアン化物とシアン酸塩を生じるなど、ハロゲン元素と似た性質を示す。エーテルなど有機溶媒に溶けやすい。吸熱化合物であるが、純粋なものは850℃まで安定である。不純なものは300~500℃で重合して、褐色のパラシアンの塊を生じ、800℃でシアンにふたたび分解する。シアンの誘導体も重合しやすい。シアン化水素と同じく猛毒で、蒸気の最大許容量は10ppmという。
[守永健一・中原勝儼]