思考や行動の著しい乱れに関する医学用語。意識障害といってもよく,自分自身および自分と外界との関係に対する意識が希薄になり,時間や場所,方向などの認識が困難で,話や行動にまとまりがなく,周囲と正しい交渉ができない。こうした意識障害はいわば深い昏睡から半覚醒した状態であり,当人は眼を閉じたり開いたりして横たわっていることが多く,歩こうとしてもよろけてぶつかったりする。振戦せん妄(しんせんせんもう)といわれるアルコール依存症のさいには幻覚,錯覚,人物誤認などが活発に現れ,また重い頭部外傷の一時期には激しい興奮を伴って錯乱が出現したりする。これらから覚めて正常の意識状態に戻ったさいには,その間のことを覚えていないのが普通である。心因性の場合,たとえば生命を脅かすような破局的事態によって外界と自己の認識ができず考えをまとめることのできない困惑状態が起こった場合や,統合失調症の急性状態で支離滅裂状態に陥った場合にも錯乱といわれることがある。
執筆者:中根 晃
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意識障害の一型で、正しくは精神錯乱とよばれる。いちおう覚醒(かくせい)していて意識混濁はみられないか、あっても軽度であるにもかかわらず、意識内容の精神的統合がうまく行われないことを基本的特徴とする一種の意識変容である。支離滅裂な言語表出に反映される思考障害、外界と情況の認知障害ないし誤認、日付や自分のいる場所がわからず身近な人の区別ができない失見当、過去の体験の想起困難ないし記憶錯誤などが目だった症状であるが、幻覚や精神運動性興奮はかならずしも伴わない。なお「私はだれなのか、どうなったんだろう」と不審がる困惑状態がとくに目だつ場合はアメンチアとよばれ、急性脳疾患(脳外傷など)のほか、さまざまの急性精神病でしばしば出現する。
[濱中淑彦]
…以来アメンチアは,外因反応型を呈する疾患,すなわち症状精神病の特徴的な意識障害の一型とされた。なおイギリスでは,amentiaは精神遅滞を意味し,かわってconfusionという言葉が用いられる。【石黒 健夫】。…
※「錯乱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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