シエンティフィコス(英語表記)Científicos

改訂新版 世界大百科事典 「シエンティフィコス」の意味・わかりやすい解説

シエンティフィコス
Científicos

P.ディアスの第1次政権時代(1884-88)のメキシコ人有識者グループ約50人を指した呼称。リマントゥールLimantour,ブルネスF.Bulnes,シエラ,ラバサE.Rabasa,カサススJ.Casasús,パラP.Parra,カマチョS.Camachoらが著名である。シエラが〈政府は科学cienciaを心得る人間で構成されるべきだ〉と説いたのが命名の由来。当初このグループは知的集団であったが,1892年以降はディアス政権存続のため,選挙制度を見直す〈自由連合Unión Liberal〉という政党形態を備えたグループに変貌した。そのため,ディアスの政敵からはシエンティフィコスの呼称が政治グループ名として使われはじめた。さらに1909年には〈再選クラブClub Reeleccionista〉に発展し,独裁政権を安泰ならしめるうえの重要な役割を果たした。彼らは実証主義と進化論をまぜあわせたイデオロギーで体制を容認する立場をとり,ディアス長期独裁政権に荷担する結果となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シエンティフィコス」の意味・わかりやすい解説

シエンティフィコス
しえんてぃふぃこす
Científicos

スペイン語で「科学的な人々」の意。1890年代以後、メキシコのディアス独裁政権(1876~1911)のイデオローグ官僚、政治家として活躍したエリートたちの総称。彼らはコントの実証主義やスペンサーの社会進化論の影響を受け、科学的、合理的精神を強調するとともに、強力な政治権力による「社会秩序」の確立、外国資本、近代技術、白人移民の導入によるメキシコの「進歩」を主張した。反面、メキシコ固有の文化やメキシコの大衆蔑視(べっし)、ヨーロッパ文明を崇拝し、物心ともにメキシコの半植民地化を促進した。大蔵大臣となったリマントゥールなどが、その代表的人物である。

野田 隆]

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世界大百科事典(旧版)内のシエンティフィコスの言及

【メキシコ革命】より

…他方,経済の発達に伴って中産階級や労働者階級が増大したが,ディアス体制下のメキシコ社会は少数のグループが権力と経済を握る閉鎖的な社会であった。そして〈シエンティフィコス〉と呼ばれた科学主義を信奉する少数の特権集団がメキシコ的なものを非合理的とみなして排除し,ヨーロッパをモデルとした近代化政策を推進した。その結果,20世紀初頭のメキシコは秩序と繁栄を享受し世界有数の近代国家にまで成長したかのようであった。…

※「シエンティフィコス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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