シナルキスモ(英語表記)sinarquismo

改訂新版 世界大百科事典 「シナルキスモ」の意味・わかりやすい解説

シナルキスモ
sinarquismo

1937年に,ドイツ人技師のシュライターHellmut Oscar Schreiter,メキシコ人アンヘル・ウルキサJosé Angel Urquizaらによってメキシコで結成されたシナルキスタ国民同盟母体とする運動。その前身,反共センターの設置(1936)に見られるごとく,シュライターのそもそもの目的はメキシコにファシスト組織を植えつけることにあった。シナルキスモという名称は〈アナーキーを排するsin anarquía〉を意味し,〈マルクス主義はメキシコ国民を無産者とプロレタリアートに変えようとしている。シナルキスモが望んでいるのは有産者と自由な人間のための祖国である〉と主張した。軍隊的規律でもって統率された同盟は私的所有制を擁護し,〈集産主義的〉〈社会主義的〉方向へのカルデナス改革の行過ぎを批判するとともに,1920年代のクリステーロスcristerosの運動から神秘主義的伝統を継承することにより,単なる外来のファシスト組織からメキシコに根づいた一大民衆運動へ発展し,とりわけ官僚主義的な農地再分配政策に不信をつのらせた後進的な中部諸州の貧農層の間に広範な支持を見いだし,最盛期の1940-41年には50万名強をも動員することができた。ようやく44-48年に衰退に向かうが,現在でも隠然たる勢力をほこり,79年総選挙では同盟の後身メキシコ民主党(1971創設)が約30万票を集めて400議席中の10議席を得,体制内超保守派の一角を占めた(89年現在,500議席中13議席)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android