カルデナス(英語表記)Lázaro Cárdenas

改訂新版 世界大百科事典 「カルデナス」の意味・わかりやすい解説

カルデナス
Lázaro Cárdenas
生没年:1895-1970

メキシコ政治家。印刷工の出身で,州知事,閣僚,国民革命党党首を歴任したのち,大統領(1934-40)となる。就任後は,前任者カジェスを追放し,反動化した革命政府を労働者や農民の支援によって立て直し,1917年憲法の約束した諸改革を実行した。農業面では,2000万haの土地を77万名の農民に再分配した。これは1916-79年に分配された土地の35%,受益者総数の27%に相当する。また従来の改革とは異なり,アシエンダ内に居住するペオンにも土地を分配し,外国人地主の土地を接収し,商業的農業地帯では〈集団エヒード(共用地)〉を組織して土地の集団利用をはかった。その他,鉄道の国有化(1937),労働争議に端を発した石油産業の国有化(1938),民族系中小企業の育成など,メキシコの経済的独立と資本主義の発展をはかった。政治面では労働者,農民,公務員の組織化を援助し(メキシコ労働者連合,全国農民連合,国家公務員組合連盟),部会制(労働者,農民,一般人,軍人)の導入により国民革命党をメキシコ革命党(1938)に改組した。この改組は労農大衆の政治参加を拡大したものの,同時に政権党による大衆操作を容易にし,40年以後の右傾化への歯止めをなくす一因ともなった。また国際連盟終始尊重し,スペイン内戦では最後まで共和派支持するとともに,トロツキーらの亡命者を受け入れるなど,国際的にも名を残した。カルデナスの評価については今なお分かれるが,カリスマ性豊かで,国民からもっとも慕われた大統領であった。政権党の大統領候補による全国遊説を始めたのも彼である。後年,メキシコ革命党の後身である制度的革命党を離れて,より多くの社会変革の必要を説きつづけた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルデナス」の意味・わかりやすい解説

カルデナス
かるでなす
Lázaro Cárdenas
(1895―1970)

メキシコの政治家。ミチョアカン州ヒキルパンの生まれで、農民や労働者大衆のために多くの改革的政策を行った。1913年、当時メキシコで進行していた革命に身を投じ、オブレゴン派のカリエス将軍のもとで活躍して革命軍の准将にまで昇進した。革命後は、1928年から1932年までミチョアカン州の知事となり若き革新知事として名をはせた。この間、1931年には連邦政府の内相を務め、1933年には陸海相となった。1934年の大統領選挙で与党の国民革命党の候補者となり、国民の圧倒的多数に支持されて当選した。就任後、空文化していた1917年憲法の社会改革的条項を大胆に実施し、空前の規模で土地改革を行って伝統的な大土地所有制を解体し、エヒード(共有地)農民を創出するとともに、メキシコ労働者連合(CTM)を結成させ、労働者の地位向上に努めた。1938年には米英系の外国石油会社を国有化してナショナリズムを高揚させた。1940年に大統領を退任したのちも革命精神を失わず、改革のシンボル的存在となり続け、キューバ革命に対しても深い同情を示した。

[加茂雄三]

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百科事典マイペディア 「カルデナス」の意味・わかりやすい解説

カルデナス

メキシコの政治家。メキシコ革命に参加し,州知事,閣僚,国民革命党(制度的革命党の前身)党首を歴任。大統領(1934年―1940年)として1917年憲法の約束した大規模な農地改革,鉄道・石油国有化に成功,国内民主化と国家主権確立に貢献。国際連盟を尊重し,スペイン内乱では共和国派を支持するとともに,トロツキーらの亡命者を受け入れた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カルデナス」の解説

カルデナス
Lázaro Cárdenas

1895~1970

メキシコの大統領(在任1934~40)。1920年代後半からメキシコの政治を牛耳(ぎゅうじ)っていたエリーアス・カリェスの勢力を退け,労働組合と農民の支持を基盤として一連の改革を行った。その結果,1800万haの農地が分配され,鉄道国有化(38年),石油産業国有化(38年)が実現した。スペイン内戦にあたっては,共和国政府を支持して亡命者を受け入れた。また,従来の国民革命党をより広い基盤を持つメキシコ革命党に改組し,一党支配体制の基礎をつくった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルデナス」の意味・わかりやすい解説

カルデナス
Cárdenas, Lázarro

[生]1895.5.21. ミチョアカン
[没]1970.10.19. メキシコシティー
メキシコの軍人,政治家。 1913年 18歳でメキシコ革命に参加し,23年将軍となった。 28年ミチョアカン州知事,30年国民革命党議長,31年内相,33年陸・海相をつとめた。 34~40年大統領となり,社会経済改革6ヵ年計画を施行。農地改革,労働運動の後援育成,石油産業の国有化,政治体制の再編成を実施し,10年に始ったメキシコ革命を実質的に終結させた。 55年スターリン平和賞受賞。

カルデナス
Cárdenas

キューバ北西部の都市。フロリダ海峡に開口するカルデナス湾の湾奥に位置する。 1828年に建設され,周辺の沼沢地が干拓されてから次第に発展。現在キューバの主要な砂糖積出港の一つで,製糖,ラム酒製造,ロープ製造などの工業がある。首都ハバナの東約 120kmにあたり,道路で連絡。人口7万 4470 (1989推計) 。

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旺文社世界史事典 三訂版 「カルデナス」の解説

カルデナス
Lázaro Cárdenas del Rio

1895〜1970
メキシコ大統領(在任1934〜40)
印刷工出身で,アシエンダ(大農場)内の債務奴隷(ペオン)に土地を分配するなどの農地改革や,鉄道・石油産業の国有化などに成功した。スペイン内戦においては共和派を支持するなど,国際政治の面でも活躍した。

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世界大百科事典(旧版)内のカルデナスの言及

【メキシコ革命】より

…狭義には35年間に及んだディアス独裁体制(1877‐1911)の打倒を目ざした1910年11月20日のマデロによる武装蜂起に始まり,革命憲法が制定された17年に終結したとされる。より広義には民主的政治体制の確立,農地改革の実施など革命目標が実現されたカルデナス政権(1934‐40)の終了をもって革命は終結したとされる。世界がいわゆる帝国主義時代に入った1870‐80年に確立したディアス独裁体制の下で,メキシコは外国資本を積極的に誘致し近代化を急いだが,その結果,外国資本によるゆがんだ経済開発が促進され,メキシコの富は欧米先進諸国の支配するところとなった。…

※「カルデナス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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