日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シルバー‐ラッセル症候群
しるばーらっせるしょうこうぐん
Silver-Russell syndrome
低身長や骨格の左右非対称などを主徴とする先天奇形症候群。略称SRS。子宮内発達遅延による出生時の低身長および出生後の発育障害による低身長と痩(や)せのほか、逆三角形で小さく非対称な顔面、頭蓋変形に伴う水頭症様にみえる頭囲の拡大、身体左右非対称、第5手指の内側彎曲(わんきょく)などの小奇形をもち、症状も多様である。1953年にアメリカの小児科医シルバーHenry K. Silver(1918―1991)、1954年にイギリスの医師ラッセルAlexander Russell(1914―2003)がそれぞれ独立に報告したため「シルバー症候群」「ラッセル症候群」「ラッセル低身長症」ともいう。また、欧米では「ラッセル‐シルバー症候群Russell-Silver syndrome」と表記することが多く、その場合、略称はRSSとなる。ほとんどのケースに遺伝性は認められないが原因はわかっておらず、一部に家族発生の報告もある。また運動機能の発達遅延がみられる場合もあるが、知能レベルの障害はみられない。根本的な治療法はみつかっておらず有効な治療薬も特定されていないため、対症療法に頼るのが現状である。出生後の発育障害に対しては成長ホルモンの投与が有効とする報告もあるが、原因としてホルモンの分泌不全は特定されていない。予後は良好な場合が多く、成長するにつれて症状の改善がみられることが多い。日本ではまれな疾患であり、疾病の原因が特定されず認知・解明されないまま経緯しているため、患者・家族による「シルバー・ラッセル症候群ネットワーク」(非営利の任意団体)は、疾病についての研究促進と患者・家族の生活上の負担軽減、適切な医療や福祉が受けられることなどを訴えて活動している。
[編集部]