ジェームズ(Etta James)(読み)じぇーむず(英語表記)Etta James

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ジェームズ(Etta James)
じぇーむず
Etta James
(1938―2012)

アメリカの黒人女性シンガー。ダイナミックな歌声で知られる。ロサンゼルスに生まれる。ブルースからソウル・ミュージックまで幅広くこなし、アメリカ黒人音楽の大衆性を失わないことで定評がある。小さいころには名ジャズ・ピアニスト、アール・ハインズEarl Hines(1903―1983)のもとにいたこともあり、天才的な歌唱力が近隣に知れわたっている少女だった。

 1955年、ジェームズとピーチズの共演作「ロール・ウィズ・ミー・ヘンリー」(のちに「ウォール・フラワー」と改題)がリズム・アンド・ブルース・チャートで1位となり、名声を獲得した。当時はロックン・ロールが台頭しアメリカに本格的な若者文化が花咲いた時期であり、またルース・ブラウンRuth Brown(1928―2006)やラバーン・ベイカーLaVern Baker(1929―1997)、リトル・エスターLittle Esther(1935―1984、のちのエスター・フィリップスEsther Phillips)といった若い黒人女性シンガーが堂々と自己主張を歌に込めた変革のときだったが、ジェームズもその大きな流れにのった一人として活躍した。このような女性シンガーの活躍が、アレサフランクリンに代表されるソウル・ミュージックにおける女性解放の歌声の基盤となっているのだった。

 1960年代の一時期、ジェームズは麻薬に溺(おぼ)れたが、その後に復活し、1967年には代表的作品となる「テルママ」を発表、とくにイギリスを中心としたヨーロッパで、チャック・ベリーらロックン・ロール・スターと並び高い評価を得る存在となった。1998年、「ザ・ブルース・ホール・オブ・フェイム」(ブルースの殿堂)入りを認定される。1950年代から1960年代にかけて活躍した黒人の女性シンガーがつぎつぎと舞台から退きつつある時代にあって、貴重な存在として活動した。

藤田 正]

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