アメリカ黒人の伝統的大衆音楽の形式。奴隷解放ののち,南部農業地帯の黒人たちが抑圧の中で味わった個人的感情を,つぶやくように吐き出す歌として発生し,20世紀初頭にほぼ一定の形式をもつようになった。米西戦争(1898)のころからアメリカ南部にギターが普及したことが大きく関与しており,ブルースはギター弾き語りの形にまとまる中で,西洋音楽の和声構造を身につけた。標準的なブルースの定型は,A A Bの3行から成る詩を12小節に収め,各行ごとに後半でギターが歌の間に割り込む形になっている。そのギターの即興的な入り方が,即興音楽としてのジャズを生む母体になったとする学者もおり,ブルースがジャズの基盤の一つであったことはまちがいない。ミとシ(さらにソも)が,ときにブルー・ノートblue noteと呼ばれる低めの音になることに黒人音楽の特質を示す音階と和声構造はジャズの重要な素材となっている。ブルース自体はジャズの支持層よりもさらに底辺の黒人社会でダンス音楽として機能し続け,ブギウギを派生させるなど,民俗音楽から商業音楽へと性格を変えていった(社交ダンスでいう〈ブルース〉はスロー・フォックストロットのことであり,本来のブルースとは関係がない)。
南部農村から北部,東部,西部の工業地帯へ黒人労働力の移動に伴って,ブルースの基盤も都市ゲットーに重点を移し,1930年代からピアノ,ドラムスを導入してグループないしバンドの形で演奏されることが多くなり,第2次世界大戦のころには電気ギターを使うようになって,リズム・アンド・ブルースを生み,ロックの成立を促した。60年代以降,黒人大衆の社会生活や意識が大きく変わる中で,彼らにとってブルースのもっていた役割は小さくなりつつあるようである。
代表的な演奏者(ほとんどの場合作詞・作曲者を兼ねる)として,最も初期の南部のギター弾き語りスタイルのブラインド・レモン・ジェファソンBlind Lemon Jefferson(1897-1930),チャーリー・パットンCharlie Patton(1887?-1934)ら,1920~30年代にピアノを用いて都市化の先がけをしたリロイ・カーLeroy Carr(1905-35)とピーティー・ウィートストローPeetie Wheatstraw(1902-41),30年代にジャズのスウィング感を取り入れたバンド・ブルースを推進したビッグ・ビル・ブルーンジーBig Bill Broonzy(1893-1958。ギター),30年代中葉,強烈な南部の感覚の中に次代への予感を秘めつつ若死した伝説的人物ロバート・ジョンソンRobert Johnson(1912?-38。ギター),戦後の電気ギターによるブルースを発展させたティーボーン・ウォーカーT-Bone Walker(1910-75),マディ・ウォーターズMuddy Waters(1915-83),B・BキングKing(1925- ),ブルースが急速に変貌する中で洗練されない南部の感覚を強靱に保ち続けたライトニン・ホプキンズLightnin' Hopkins(1912-82)らが挙げられる。
執筆者:中村 とうよう
フランスの政治家。南フランス出身で,医学生の頃から反第二帝政運動に加わる。1872年インターナショナルに加盟し,スペイン,スイスを足場に,反マルクス陣営の先頭に立ち,フランス国内向け地下出版など非合法活動にも従事。一時はクロポトキンらと極左派アナーキストに属した。スイスを追放されてベルギーに滞在,しだいに合法路線に転換する。1880年帰国後,フランス労働党に加入し,パリで活動。82年サンテティエンヌの党大会でゲード派とたもとを分かち,多数派の〈ポシビリスト(可能派)〉,すなわち漸進主義的な改良派の指導者の一人となる。ベルギー社会主義者ドパープの思想的影響下に,選挙による地方自治体獲得と公共業務組織化を軸とした改良的社会主義への道を主張した。1890年,左派のアルマーヌ派の脱退後は,改良派の代表者となったが,影響力は低下した。彼自身,1887年パリ市会議員に初当選,同副議長にまでなり,一時は下院議員も務めた。
執筆者:福井 憲彦
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(吉沢敬)
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…13世紀末から14世紀初めにかけ,封建的上長であるイングランド王との対立が独立戦争として激化。R.ブルースは1328年スコットランドの独立を獲得した。その後ダンカンの血統が絶え,1371年ロバート2世が即位してスチュアート朝を開始。…
…Dixielandとは南部一帯をさすあだ名である。 ディキシー時代のジャズを構成した音楽的要素のなかでいちばん目だつのは,ブラスバンドが演奏していた行進曲的要素であるが,ほかに各国民謡,セミ・クラシック,ブルースblues(南部の田舎に生まれた黒人の歌。最初は一定の形式がなかったが,ジャズ発生と同時期に,4小節3段,1コーラス12小節形式を標準とするようになった),ラグタイムragtime(南部の黒人ピアニストがケークウォークcakewalkというダンスのための音楽として作曲したピアノ音楽。…
…アメリカ合衆国南部農村地帯の黒人に行われた素朴なブルース。ブルースは19世紀後半にミシシッピ州もしくはテキサス州東部の黒人たちの間で生み出され,20世紀初頭に,主としてギター弾き語りの形で南部一帯の黒人に歌われるようになったものと推定されているが,黒人人口の南部農村から北部工業都市への移動に伴って都市化していった。…
…Dixielandとは南部一帯をさすあだ名である。 ディキシー時代のジャズを構成した音楽的要素のなかでいちばん目だつのは,ブラスバンドが演奏していた行進曲的要素であるが,ほかに各国民謡,セミ・クラシック,ブルースblues(南部の田舎に生まれた黒人の歌。最初は一定の形式がなかったが,ジャズ発生と同時期に,4小節3段,1コーラス12小節形式を標準とするようになった),ラグタイムragtime(南部の黒人ピアニストがケークウォークcakewalkというダンスのための音楽として作曲したピアノ音楽。…
…ルンドゥーもハバネラも付点8分音符と16分音符を組み合わせた軽く跳ねるリズム感をもち,ポルトガルもしくはスペインの音楽にアフリカ的リズム感を加味したものと考えられるが,これがその後のラテン・アメリカの音楽の基調となったといってよく,19世紀半ばにブラジルで生まれた器楽の音楽ショーロも,19世紀末にアルゼンチンのブエノス・アイレスで生まれた踊りの音楽タンゴも,このリズムがもとになっている。また,有名なアメリカのポピュラー・ソング《セント・ルイス・ブルース》の一部にもこのリズムが使われている。1930年代以降に一世を風靡したキューバのルンバ,ブラジルのサンバといったダンス音楽も,このリズムが発展したものといえる。…
※「ブルース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
カスタマー(顧客)とハラスメント(嫌がらせ)を組み合わせた造語「カスタマーハラスメント」の略称。顧客や取引先が過剰な要求をしたり、商品やサービスに不当な言いがかりを付けたりする悪質な行為を指す。従業...
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