リン

デジタル大辞泉 「リン」の意味・読み・例文・類語

リン(Lynn)

米国マサチューセッツ東部の都市ボストン北東郊、マサチューセッツ湾北岸に位置する。17世紀前半より、靴製造で知られる工業都市で、現在もゼネラルエレクトリック社の工場が置かれる。

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化学辞典 第2版 「リン」の解説

リン
リン
phosphorus

P.原子番号15の元素.電子配置[Ne]3s23p3の周期表15族元素.原子量30.973762(2).天然には質量数31の核種のみ存在する単核種元素の一つ.質量数24~46の放射性核種が知られる.32Pは半減期14.3 d でトレーサーとして多用される.錬金術時代(1669年)にH.Brandにより尿中に黄リンが発見され,りん光を発することから“光を運ぶ”という意味のギリシア語ωσορο(fosforos)から命名された.宇田川榕菴は天保8年(1837年)出版の「舎密開宗」で,波斯波律斯(ホスホーリュス)燐と記載している.
主要鉱物として,りん灰石(アパタイト,Ca5F(PO4)3),藍(らん)鉄鉱Fe3(PO4)2・8H2O,銀星石Al3(PO4)2(OH)3・5H2Oなど.埋蔵量ではモロッコとサハラ西部42%,中国26%,アメリカ7%.産出量(2007年)では中国24%,アメリカ20%,モロッコとサハラ西部19%.リン酸カルシウム(リン鉱石,骨灰,海鳥ふん)にケイ酸を混合し,炭素(コークスなど)で還元すると,リンが気体の P4 として蒸留される.これを急冷して白リン(黄リン)をつくる.融点44.2 ℃,沸点280 ℃,密度1.82(白リン(黄リン)),2.2(赤リン).2.69(黒リン)g cm-3(20 ℃).リンの変態には P4 分子からなる非金属性の白リンとグラファイトに似た金属リンとがある.黄リン,赤リン,紅リンはこれらの変態の固溶体紫リン,黒リンは金属リン変態とされている.導電性,化学反応性,溶解度,毒性などが変態によりいちじるしく差がある.白リンは絶縁体,黒リンは半導体.白リンは水に不溶,二硫化炭素に可溶.空気中で自然発火して十酸化四リンP4O10となる.光(日光)照射または自己の蒸気存在下の加熱により,赤リンにかわる.工業的には,黄リンを水相中で沸点以下でゆっくり加熱転化すると得られる.二硫化炭素に不溶.417 ℃(大気圧)で昇華する.リンは硝酸によりリン酸となり,濃い水酸化ナトリウム溶液ではリン化水素PH3とホスフィン酸ナトリウムNaPH2O2を生じる.酸素,塩素とははげしく反応し,酸化数5のP4O10(五酸化二リンではない)および五塩化リンとなる.
黄リンとしては発煙剤などの直接利用もあるが,毒性,反応性がともに少ない赤リンの形で使われることが多い.多くのリン化合物製造の出発物質となる.リンはリン青銅とよばれる合金の材料にもなるが,多くはリン酸化合物として肥料,そのほか,金属表面処理液,医薬品,農薬,洗剤,食品,樹脂の可塑剤,難燃剤などに利用される.わが国の需要の80% は肥料である.リン酸イオンはDNAや生物のエネルギー源ATP,骨・歯の構成物質として生物に不可欠の元素として重要である.リンの化合物は酸化数-3~5まであり,縮合ポリリン酸,過酸化物のベルオキソリン酸も得られている.有機リン酸化合物中には化学兵器として利用されるサリン,ソマン,タブン,VXなどがある.「黄リン(別名白リン)」は,毒物および劇物取締法毒物,大気汚染防止法・特定物質,大気汚染防止法・有害大気汚染物質,労働安全衛生法〔名称等表示〕名称等を通知すべき有害物,消防法〔危険物〕危険物第3類,海洋汚染防止法・A類物質等となっている.皮膚に触れると火傷を生じ,経口摂取により中枢神経系およびほかの全身性作用,肝臓に急性作用があり,重篤な眼の損傷を起こす,きわめて危険な猛毒物質である.[CAS 7723-14-0][別用語参照]リン化物

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リン」の意味・わかりやすい解説

リン
phosphorus

元素記号P,原子番号 15,原子量 30.973761。周期表 15族,窒素族元素の1つ。天然にはカルシウムの第三リン酸塩の形で産出することが多い。リン鉱石などとして広く存在するほか,動物体の歯や骨を形成し,また複雑な有機化合物を構成して生体中に分布する。リン,リン酸,リン酸肥料の原料としては骨粉,グアノ,リン灰石,リン鉱石が利用されている。地殻存在量 0.105%,海水の含有量 0.07mg/l 。単体のリンには黄リン (白リン) ,赤リンおよび黒リンの3つの同素体がある。黄リンは無色または白色ろう状。一般に微量の赤リンを含むため黄色を呈する。α体とβ体がある。赤リンはヨウ素などを触媒とし黄リンを 58℃以下の温度に融解すると生成する。6種の変態がある。黒リンは白リンを 1cm2あたり1万 kg以上の圧力下で数百℃に熱すると生成する。2変態があり,黒鉛に似て電気の良導体である。リンは硫化リン,ハロゲン化リンの製造,マッチの製造,各種有機化合物,リン系農薬の合成などに用いられる。リン酸としては各種リン酸塩の製造,特にリン酸ナトリウム,重合リン酸ナトリウムとして洗剤に使われた。

リン
Lynn, Ralph

[生]1882.3.18. マンチェスター
[没]1962.8.8. ロンドン
イギリスの俳優。 1900年にデビュー。喜劇やファルスを演じて人々に親しまれた。代表的舞台は『うなるほどある金』 (1922) ,『新婚旅行はほんとうに必要か』 (44) で,ともに2年間のロングランとなった。 29年以後は映画にも出演したが,58年引退。

リン
Lynn

アメリカ合衆国,マサチューセッツ州の北東部,マサチューセッツ湾北岸にある都市。製靴の中心地として繁栄,ゼネラル・エレクトリック会社の大工場があり,電気機械,車両装置などの製造が盛んで,製靴工業も発達している。人口8万 1245 (1990) 。

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世界大百科事典 第2版 「リン」の意味・わかりやすい解説

リン【Lynn】

アメリカ合衆国マサチューセッツ州北東部にある工業都市。人口7万8000(1994)。1629年の町の創設以来,製造業が発達し,現在もゼネラル・エレクトリック社の工場がおかれ,発電機,ジェットエンジンなどが製造されている。リンは歴史的には製靴業が有名で,19世紀中葉においては,同産業が盛んであったニューイングランド地方の中心地であった。リンの靴生産高は,フィラデルフィアやニューヨーク市と肩を並べ,とくに機械(ミシン)による生産と工場制度の導入において先駆者的役割を果たした。

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食の医学館 「リン」の解説

リン

骨や歯、細胞膜の材料となるほか、炭水化物の代謝、ナイアシンの吸収などを促進します。不足すると骨や歯が弱り、神経痛や腎臓結石を起こしやすくなります。過剰摂取はカルシウムの吸収を阻害します。卵黄、タタミイワシ、スルメ、サクラエビ、ワカサギ、チーズ、シシャモなどに多く含まれています。成人1日あたりの目安量は男性1000mg、女性800mg、上限は3000mgです。

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栄養・生化学辞典 「リン」の解説

リン

 原子番号15,原子量30.973762,元素記号P,15族(旧VB族)の元素.単体には10種以上の同素体がある.あらゆる生物の必須元素.主にリン酸の形で生物体に存在.核酸の成分,ATPの構成元素,信号伝達系のタンパク質のリン酸化など,生体の重要な成分や機能において必須な元素.

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