P.原子番号15の元素.電子配置[Ne]3s23p3の周期表15族元素.原子量30.973762(2).天然には質量数31の核種のみ存在する単核種元素の一つ.質量数24~46の放射性核種が知られる.32Pは半減期14.3 d でトレーサーとして多用される.錬金術時代(1669年)にH.Brandにより尿中に黄リンが発見され,りん光を発することから“光を運ぶ”という意味のギリシア語ωσ
ορο
(fosforos)から命名された.宇田川榕菴は天保8年(1837年)出版の「舎密開宗」で,波斯波律斯(ホスホーリュス)燐と記載している.
主要鉱物として,りん灰石(アパタイト,Ca5F(PO4)3),藍(らん)鉄鉱Fe3(PO4)2・8H2O,銀星石Al3(PO4)2(OH)3・5H2Oなど.埋蔵量ではモロッコとサハラ西部42%,中国26%,アメリカ7%.産出量(2007年)では中国24%,アメリカ20%,モロッコとサハラ西部19%.リン酸カルシウム(リン鉱石,骨灰,海鳥ふん)にケイ酸を混合し,炭素(コークスなど)で還元すると,リンが気体の P4 として蒸留される.これを急冷して白リン(黄リン)をつくる.融点44.2 ℃,沸点280 ℃,密度1.82(白リン(黄リン)),2.2(赤リン).2.69(黒リン)g cm-3(20 ℃).リンの変態には P4 分子からなる非金属性の白リンとグラファイトに似た金属リンとがある.黄リン,赤リン,紅リンはこれらの変態の固溶体,紫リン,黒リンは金属リン変態とされている.導電性,化学反応性,溶解度,毒性などが変態によりいちじるしく差がある.白リンは絶縁体,黒リンは半導体.白リンは水に不溶,二硫化炭素に可溶.空気中で自然発火して十酸化四リンP4O10となる.光(日光)照射または自己の蒸気存在下の加熱により,赤リンにかわる.工業的には,黄リンを水相中で沸点以下でゆっくり加熱転化すると得られる.二硫化炭素に不溶.417 ℃(大気圧)で昇華する.リンは硝酸によりリン酸となり,濃い水酸化ナトリウム溶液ではリン化水素PH3とホスフィン酸ナトリウムNaPH2O2を生じる.酸素,塩素とははげしく反応し,酸化数5のP4O10(五酸化二リンではない)および五塩化リンとなる.
黄リンとしては発煙剤などの直接利用もあるが,毒性,反応性がともに少ない赤リンの形で使われることが多い.多くのリン化合物製造の出発物質となる.リンはリン青銅とよばれる合金の材料にもなるが,多くはリン酸化合物として肥料,そのほか,金属表面処理液,医薬品,農薬,洗剤,食品,樹脂の可塑剤,難燃剤などに利用される.わが国の需要の80% は肥料である.リン酸イオンはDNAや生物のエネルギー源ATP,骨・歯の構成物質として生物に不可欠の元素として重要である.リンの化合物は酸化数-3~5まであり,縮合ポリリン酸,過酸化物のベルオキソリン酸も得られている.有機リン酸化合物中には化学兵器として利用されるサリン,ソマン,タブン,VXなどがある.「黄リン(別名白リン)」は,毒物および劇物取締法毒物,大気汚染防止法・特定物質,大気汚染防止法・有害大気汚染物質,労働安全衛生法〔名称等表示〕名称等を通知すべき有害物,消防法〔危険物〕危険物第3類,海洋汚染防止法・A類物質等となっている.皮膚に触れると火傷を生じ,経口摂取により中枢神経系およびほかの全身性作用,肝臓に急性作用があり,重篤な眼の損傷を起こす,きわめて危険な猛毒物質である.[CAS 7723-14-0][別用語参照]リン化物
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
常に身に迫る一触即発の危険な状態をいう。シラクサの僭主ディオニュシオス1世の廷臣ダモクレスが王者の幸福をたたえたので,王がある宴席でダモクレスを王座につかせ,その頭上に毛髪1本で抜き身の剣をつるし,王...
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