改訂新版 世界大百科事典 「スルフィン酸」の意味・わかりやすい解説
スルフィン酸 (スルフィンさん)
sulfinic acid
炭素原子にスルフィン酸基-SO-OHが結合した有機化合物の総称。亜硫酸H2SO3の-OHが一つ,炭化水素基に置き換わった形R-SO-OHをしており,一塩基酸として弱酸性を示す。一般に不安定なものが多く,徐々に分解してスルホン酸チオールエステルとスルホン酸を生成する。
スルフィン酸を酸化するとスルホン酸となる。湿った状態あるいは溶液中ではとくに酸化されやすく,空気によってもスルホン酸に変わる。還元によりチオールが生成する。スルフィン酸は有機リチウム化合物やグリニャール試薬に二酸化硫黄を作用させることにより合成される。
塩化物,エステル,アミドなどスルフィン酸の誘導体も,やはりかなり不安定な化合物である。
執筆者:小林 啓二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報