ダイヤモンド(Douglas Warren Diamond)(読み)だいやもんど(英語表記)Douglas Warren Diamond

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ダイヤモンド(Douglas Warren Diamond)
だいやもんど
Douglas Warren Diamond
(1953― )

アメリカの経済学者。シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授。専門は金融経済学。銀行の取り付け騒ぎ(バンク・ラン)などを解明する「ダイヤモンド・ディビッグ・モデルDiamond-Dybvig model」を考案したことで知られる。

 アメリカのシカゴ生まれ。1975年にブラウン大学を卒業し、エール大学で1980年に経済学博士号(Ph.D.)を取得。1979年からシカゴ大学で教鞭(きょうべん)をとっている。

 1983年、セントルイスのワシントン大学のP・H・ディビッグとの共同論文「Bank Runs, Deposit Insurance, and Liquidity」で、銀行は短期預金を集めて長期的に貸し出す「満期変換」とよばれる効率的な金融仲介機能があると同時に、風評などによる取り付け騒ぎといった脆弱(ぜいじゃく)性をあわせもつことを理論モデルとして示した。同モデルは、銀行規制や金融制度の設計に幅広く応用されており、リーマン・ショックや新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行下でも、世界経済が恐慌に陥るのを防ぐ役割を果たしたとされる。

 1984年の論文「Financial Intermediation and Delegated Monitoring」では、銀行の借り手監視(モニタリング)機能を分析するモニタリング理論を提示。こうしたモデルは銀行だけでなく、通貨危機を含む幅広い金融危機の分析に活用され、預金保険制度、中央銀行の最後の貸し手としての機能、銀行の健全性を維持するバーゼル合意など、各種の銀行規制や金融制度づくりの理論的基盤となった。

 2022年、「銀行の役割、とりわけ金融危機時に果たすその役割と銀行破綻(はたん)回避の重要性を明らかにした」功績でノーベル経済学賞を受賞した。ディビッグおよび、リーマン・ショック時のアメリカ連邦準備制度理事会(FRB議長だったバーナンキとの共同受賞であった。

[矢野 武 2023年2月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例