新型コロナウイルス感染症(読み)しんがたころなういるすかんせんしょう(英語表記)COVID-19

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

新型コロナウイルス感染症
しんがたころなういるすかんせんしょう
COVID-19

新型コロナウイルスSARS-CoV-2(サーズコブツー))がヒトに感染することによって発症する感染症。2019年(令和1)に初めて発生が確認された新興感染症であり、当初、日本においては感染症法上の「指定感染症」に指定された。指定感染症に指定された感染症は、公衆衛生に応じた措置(強制的な入院措置や休業措置など)が可能になるほか、入院にかかる費用が公費負担となるなどの規定がある。なおその後2021年2月13日より、法的位置づけは「新型インフルエンザ等感染症」に変更された。

[和田耕治 2021年12月14日]

発生の経緯

2019年12月31日、中国・湖北(こほく)省武漢(ぶかん)市で原因不明の肺炎患者が発生したことが報告された。その後2020年1月7日には新型のコロナウイルスが分離されたことが報告され、日本では2月1日に施行された政令において、ウイルスおよび疾患の法令上の公式名称がそれぞれ「新型コロナウイルス」「新型コロナウイルス感染症」と定められた。この新型ウイルスは2002(平成14)~2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS(サーズ))や中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS(マーズ))の病原体と同じコロナウイルスに分類される動物由来のウイルスであることが判明し、2月11日にはウイルス名が国際的に「SARS-CoV-2」と命名された。宿主動物はコウモリではないかといわれているが、いまだ議論がある。また、どういう形で人に広がるようになったかについても不明な点が多い。世界保健機関(WHO)は、このウイルスに感染した場合の疾患名をcoronavirus infectious disease, emerged in 2019に由来して「COVID-19(コビッドナインティーン)」と命名した。ちなみに、コロナウイルスは電子顕微鏡で見ると王冠のような形に見えることから、ギリシア語で王冠を意味する「コロナ」という名前がついている(本稿では、以下「新型コロナウイルス」「新型コロナウイルス感染症」の名称を用いる)。

[和田耕治 2021年12月14日]

感染者数と感染経路

2021年11月末現在、世界での感染者数は2億6000万人を超え、死者は500万人を上回っている。日本では170万人以上が感染し、死亡者数は1万8000人以上となっている。

 感染経路としては、飛沫(ひまつ)感染、マイクロ飛沫感染(後述)、接触感染が考えられている。飛沫感染やマイクロ飛沫感染のように、人の声や(せき)などで発せられる飛沫を吸い込むことでの感染が、接触感染よりも多いと考えられている。

 2020年3月9日、厚生労働省専門家会議の見解として、「(1)換気の悪い閉空間であった、(2)多くの人が密集していた、(3)近距離での会話や発声が行われた、という三つの条件が同時に重なった場」がクラスターとよばれるような多くの人が感染する機会となることが示された。これを、(1)換気の悪い密閉空間、(2)多数が集まる密集場所、(3)間近で会話や発声をする密接場面=「三つの密(3密)」という表現を用いて首相官邸がポスターを作成し、以後「3密」ということばが広く国民の間でも周知されるようになった。

 3密場面では、感染者がいて、会話などで飛沫が飛び、それを吸い込むことによるマイクロ飛沫感染が起きていると考えられる。マイクロ飛沫感染の対策として換気が推奨されているが、できるだけ3密の環境をつくらない、できるだけ短時間に留めるなどの対応が求められる。なお、「マイクロ飛沫感染」の定義についてはいまだ議論されており、「エアロゾル感染」ということばで表現されることもある。いずれも5マイクロメートル未満の微細な粒子が、しばらくの間、重力に影響されずに空気中を漂い、少し離れた距離にまで広がり感染が生じる事象のことをさしている。空気感染が起こりえるよりは短い距離だが、空調などの影響を受け、5メートル程度にまでマイクロ飛沫が広がり、そこにいた人が感染した例が報告されている。

[和田耕治 2021年12月14日]

感染から発症まで

新型コロナウイルスを体内に取り込んだ後、発症するまでの期間(潜伏期間)は1~12.5日間とされているが、多くは4~5日後に発症すると考えられている。

 新型コロナウイルス感染症に特徴的な点として、発症する2日ぐらい前から、会話などで生じる飛沫にウイルスが排出されていると考えられており、発症前に会食などでマスクをせずに会話をして、それがとくに長時間に及んだ場合には同席者などが感染するケースも多く報告されている。

 感染が判明した場合には、自宅での療養や療養施設への入所、医療機関への入院等により、感染を拡大させないための隔離措置が講じられる。発症から8日程度経過すると、他人に感染させるウイルスの排出はなくなることも明らかになりつつある。現在のところ「発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合」が隔離解除の目安とされている。

[和田耕治 2021年12月14日]

症状と経過

症状は感冒(かぜ)と似ており、発熱、咳、咽頭痛、鼻水、倦怠(けんたい)感、下痢から始まる。これらの症状が一つであったり複数であったりさまざまである。味覚障害嗅覚(きゅうかく)障害などを伴うことがあるが、味覚や嗅覚の障害が起こるのは発症後7日程度経ってからであることが多い。感染しても無症状や軽い症状の人もいれば、集中治療管理が必要な重症肺炎を発症する人もおり、症状の出方は幅広い。

 若年世代では自然経過で軽快することが多いが、とくに高齢者では重症化するリスクが高い。日本において、人工呼吸器を必要とするなど重症化する人の割合は、50歳代以下では0.3%である一方、60歳代以上では8.5%、さらに死亡する人の割合は50歳代以下では0.06%、60歳代以上では5.7%となっている。また、高齢者だけでなく、基礎疾患を有する人も重症化しやすいとされる。

 なお、回復後にも1割程度の人に後遺症が残ることが知られており、倦怠感、呼吸困難、脱毛、味覚障害、嗅覚障害などが報告されている。若年世代でも味覚や嗅覚の障害などが半年程度続くといった例が報告されている。

[和田耕治 2021年12月14日]

診断

診断のための検査として、PCR検査抗原定量検査、抗原定性検査などが行われている。医療機関で行われるだけでなく、感染拡大を受けて薬局などでも検査用キットが売られるようになったが、正しく使用されているか、また検査の精度管理などが課題となっている。

 なお、検査で「陰性」とされた場合でも、そのことのみをもって感染が否定されるものではない。あらゆる検査には、一定の割合で「偽陰性」(陰性でないのに陰性と判定されること)があり、またその逆として「偽陽性」(陽性でないのに陽性と判定されること)が生じる可能性があることに注意が必要である。

[和田耕治 2021年12月14日]

検査

新型コロナウイルス感染症はきわめて多彩な臨床症状を呈するため、確定診断は現時点でPCR検査や抗原検査に頼らざるをえない。2020年前半の流行初期には診断の確定に抗体検査が有意義であるかのような情報が流れ、医療現場が混乱に陥った経緯がある。簡単にいえば、抗体検査は血中の抗体を調べるものである。たとえば、ある一個人が細菌やウイルスによる初めての感染症(新興感染症)に罹患(りかん)したとする。体内では初期に高感度型の免疫グロブリンIgMが産生され、この情報が免疫組織に受け渡され、IgGの上昇により感染が抑え込まれる。この場合、IgGは中和抗体に相当する。つまり、これはあくまでも新型コロナウイルスに限らない新興感染症に対する免疫反応であり、IgG上昇の反応があったとしても新型コロナウイルス感染症を特異的に証明するものではない。そのため抗体検査による結果の解釈について、医療現場に混乱を生じさせる結果となってしまった。

 次に登場したのが、抗原検査である。この場合の抗原は新型コロナウイルスの構造物(スパイクタンパクやコアタンパク)であり、これらを免疫学的に認識する検査である。ただし、検査した時点で新型コロナウイルスによる感染が成立していなければ、陽性になりにくいため、感度の悪い検査と理解される結果となった(感度:70~80%)。すなわち、感染成立時には感度の高い検査であるが、キャリアとよばれる無症状の感染者をみつけるには感度の悪い検査と考えられてしまった。ただし、新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者を受け入れる際の検査としては、迅速に行いうるメリットがあり、きわめて重要である。

 一方、PCR検査は新型コロナウイルスの遺伝子断片を数億倍にも増やして、ウイルスの有無を確認する方法である。条件によっては偽陽性の可能性もあるが、上気道にウイルスは存在するが症状のないキャリア感染者をみつけるにはこの方法しか考えられない(感度:ほぼ100%)。

 現在、新型コロナウイルス感染症のスクリーニングはPCR検査と抗原検査が組み合わされ、検査の精度をあげている。また、新型コロナウイルスは変異という方法でどんどん進化し、感染力をあげていく。変異をみつけるためにはより高機能なPCR検査機器あるいはPCRにかわる検査機器の登場に頼らざるをえないが、2021年11月現在では、高度な遺伝子解析を行う以外に有効な手だてがないのが現状である。

[桑尾定仁 2021年12月14日]

治療・予防

2021年11月現在、国内においては、新型コロナウイルス感染症の治療薬として「レムデシビル」「バリシチニブ」「カシリビマブ」「イムデビマブ」「ソトロビマブ」が認可されている。また、「デキサメタゾン」(ステロイド薬)も中等症の治療に効果をあげている。こうした薬剤の使用や治療経験の蓄積により、当初より死亡する人は減りつつあるものの、特効薬の開発にまでは至っていない。

 一方、新型コロナウイルス感染症に有効性を示すワクチンmRNAワクチンウイルスベクターワクチンなど)が世界中で開発された。接種によって重症化や死亡を予防することが確認され、多くの国や地域では実際に接種が進んでいる。

[和田耕治 2021年12月14日]

課題

ウイルスは変異しうる。そのなかでも、他の人へ伝播(でんぱ)する力が強いウイルスがしだいに選択されて残っていく。これは新型コロナウイルスについても例外ではなく、新型コロナウイルス感染症の拡大後にイギリスで確認されたB.1.1.7とよばれる変異株(α(アルファ)株)は、これまでのウイルスよりもさらに感染拡大を招きやすい可能性が高いことがわかり、実際、従来のウイルスにかわって世界中に広がった。さらにその後、2020年10月にインドで確認されたL452Rという変異のあるδ(デルタ)株は、α株よりも感染の広がりの効率がよく、世界中で広がり、これに伴ってα株は姿を消していった。δ株はワクチンの効果を弱める可能性も指摘されている。

 今後もこうした変異株が中・長期的に出現してくる可能性はあり、引き続きウイルスの遺伝子検査などを行い、世界の国々とも連携することで、できる限り感染の拡大を制御することが求められている。

[和田耕治 2021年12月14日]

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デジタル大辞泉の解説

しんがたコロナウイルス‐かんせんしょう〔‐カンセンシヤウ〕【新型コロナウイルス感染症】

COVID-19

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

新型コロナウイルス感染症
しんがたコロナウイルスかんせんしょう

COVID-19」のページをご覧ください。

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