改訂新版 世界大百科事典 「チタン酸バリウム磁器」の意味・わかりやすい解説
チタン酸バリウム磁器 (チタンさんバリウムじき)
barium titanate porcelain
チタン酸バリウムBaTiO3(メタチタン酸バリウム)を主成分とする磁器で,主としてコンデンサー材料あるいは圧電材料として用いられる。チタン酸バリウムはペロブスカイト(灰チタン石CaTiO3)型構造をとり,1460℃以上で六方晶,1460~120℃で立方晶,120~0℃で正方晶,0~-80℃で斜方晶,-80℃以下で菱面体晶となる。120℃以下の三つの相は強誘電性であり,したがって圧電性をも示し,-80℃,0℃,120℃の相転移点付近で誘電率のピークを示す。120℃の相転移点はキュリー点(キュリー温度)と呼ばれ,このキュリー点はストロンチウムSrやスズSnの添加によって低温側へ,鉛Pbの添加によって高温側へ移動させることができる。SnやマグネシウムMgなどの元素を適当量添加して室温での誘電率を3000~7000とし,その温度特性を平たんにしたものは高誘電率磁器コンデンサー材料として用いられる。チタン酸バリウム磁器は通常,炭酸バリウムBaCO3と酸化チタン(Ⅳ)TiO2の固相反応によって得られるBaTiO3粉末を出発粉体として,大気中1350~1400℃の温度で焼結させることにより得られる。またシュウ酸酸化チタンバリウムBaTiO(C2O4)2・4H2Oを熱分解するとさらに高純度のBaTiO3粉末が得られる。
執筆者:桑原 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報