ツール・ド・フランス(読み)つーるどふらんす(英語表記)Tour de France フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツール・ド・フランス」の意味・わかりやすい解説

ツール・ド・フランス
つーるどふらんす
Tour de France フランス語

毎年7月に23日間をかけ、フランスをほぼ一周するコースで開催されるプロの自転車ロードレース競技大会。ツール・ド・フランスは「フランス一周」を意味する。ツールと略す。グランツールと総称されるヨーロッパを代表する自転車プロロードレース三大大会の一つである。エースとアシスト8人からなる9人編成のチームが約20チーム出場する。コースは、ゴール地点を毎回パリシャンゼリゼ大通りとして、3500キロメートル前後の公道が使われ、平地、山岳、チームおよび個人のタイムトライアルから構成される20前後のステージが年ごとに設定される。1954年にスタート地点を国外オランダに移して以来、近隣諸国にまたがったコース設定で開催されている。アルプスピレネーの山岳地がコースに毎回組み込まれるため、標高差2000メートル以上に及ぶ過酷なレースとなる。プロの自転車競技として、出場者数、賞金額ともに世界最大のロードレースである。沿道に詰めかけるファンはおよそ1500万人にのぼるとされ、世界約190か国でテレビ放送されている。

 レース期間中は、連日ステージごとに転戦を続けながら、所要時間、ステージ途中のスプリントポイント、ゴール通過順位に応じて獲得するポイントにより、順位を競い合いながらゴールを目ざす。1日のレースが終わると、成績トップの選手とチームには、リーダージャージとよばれるシャツ(フランス語で「マイヨ」)が授与され、翌日、選手はそのジャージを身につけて出場する。リーダージャージが与えられる賞は四つあり、そのほかに特別な色分けゼッケンの与えられる賞が二つある。(1)マイヨ・ジョーヌmaillot jaune(黄色) 個人総合時間賞。(2)マイヨ・ベールmaillot vert(緑) ポイント賞。(3)マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュmaillot blanc à pois rouges(白地に赤の水玉模様) 山岳賞。マイヨ・ア・ポワ、マイヨ・グランペールともよぶ。(4)マイヨ・ブランmaillot blanc(白) 25歳以下の選手のなかで、総合成績が最上位の選手に与えられる新人賞。(5)ドサール・ルージュdossard rouge(赤地に白抜き数字のゼッケン) タイムトライアルと最終ステージ以外で、目覚ましい活躍のみられた選手に与えられる敢闘賞。(6)ドサール・ジョーヌdossard jaune(黄色地に黒数字のゼッケン) 各チームでステージのゴールに到着した先頭3名の所用時間を合算し、もっとも少ないチームに与えられるチーム総合時間賞。

 ツール・ド・フランスは、1903年にフランスのスポーツ新聞社の主催により、国別対抗レースとして始まった。その後、1969年からは企業スポンサーによるプロチームが参加するチーム対抗レースへと変更され、2013年には100回目を迎えた。

[編集部]

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知恵蔵 「ツール・ド・フランス」の解説

ツール・ド・フランス

毎年7月に開催され、3週間をかけて自転車でフランス国内を回る(隣接する国を走るコースもある)ステージ・レース(複数日をかけて行われるレース)。1903年にフランスのスポーツ新聞「ロト」(のちの「レキップ」)の主催で第1回が開催され、2007年で94回目。当初は国別対抗の国際レースだったが、1969年からは企業スポンサーがつき、国とは関係ないチーム対抗レースとなった。また1983年からオープン化した。毎回アルプスとピレネー越えの山岳ステージが組み込まれ、3週間の厳しい、感動的なレースとして人気がある。スタート地点は毎回変わるが、ゴールはパリのシャンゼリゼ大通りと決まっている。07年は7月7日に英国のロンドンでのプロローグでスタートし、フランス、ベルギーを通過して再びフランスに入る時計回りの3554kmで行われた。優勝は2位と23秒差で逃げ切った、ディスカバリーチャンネルのアルベルト・コンタドール(スペイン)で、新人賞も獲得した。だが、アレクサンドロ・ヴィノクロフがドーピング違反の疑いでチームが棄権、また総合トップに立っていたミカエル・ラスムッセンがドーピング検査回避の疑いでチームに解雇されてレースを去るなど、問題が多い大会だった。通算タイムがトップの選手は、レース2日目から黄色のジャージーであるマイヨ・ジョーヌを着て走る。日本人で最初に出場したのは、1926年の川室競。彼はチーム単位の選手としてではなく、ツーリスト・ルーティエと呼ばれる個人参加で、翌27年にも出場した。ツール・ド・フランスと並ぶ、毎年行われる伝統のある長距離のステージ・レースとしては、イタリア国内を走るジロ・デ・イタリアと、スペインで行われるベルタ・ア・エスパーニャがあり、その過酷さから他のレースとは区別される特別なレースとして、グランツールと呼ばれている。

(折山淑美 スポーツライター / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツール・ド・フランス」の意味・わかりやすい解説

ツール・ド・フランス
Tour de France

フランスを舞台にした国際的規模のロードレース (→自転車競技 ) 。 1903年,フランス人の自転車選手兼ジャーナリストのアンリ・デグランジュが創設。以来,2度の世界大戦時以外は毎年開催されており,フランスの夏の国民的行事となっている。ジロ・デ・イタリアブエルタ・ア・エスパーニャとあわせて世界三大ロードレース (グランツール) といわれる。コースは周辺のベルギー,イタリア,ドイツ,スペインも含む約 3600kmで,およそ 20のステージに分けられている。1チーム9選手で,約3週間かけて走る。平坦な舗装道路から山岳地帯の急勾配の傾斜面までを走破する体力とスピードの両方が求められる過酷なレースのため,チームワークも重要視される。通算成績を毎日集計し,全ステージの総合タイム首位の選手が優勝。勝者にはマイヨ・ジョーヌと呼ばれる黄色のシャツが与えられる。

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百科事典マイペディア 「ツール・ド・フランス」の意味・わかりやすい解説

ツール・ド・フランス

世界で最も有名なプロの自転車ロードレース。1903年に始まり,年1回開催。フランス全土を約3週間にわたり3500kmの距離を走破する。レースはステージレースといわれる形態により行われ,個人ロードレース,個人タイムトライアル,チーム・タイムトライアル,クリテリウムなどのレースを組み合わせながら町から町へ移動し,個人,団体の総合順位を争う。→自転車競技
→関連項目インデュライン

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世界大百科事典(旧版)内のツール・ド・フランスの言及

【自転車競技】より

…自転車を用具として行われるスポーツの総称。現在では世界的に広く普及しているが,とくにヨーロッパではサッカーや陸上競技とともに大衆に人気のあるスポーツで,1903年にはじまった〈ツール・ド・フランス〉(フランス一周ロードレース)などは,毎年フランス国民を熱狂させている。
【歴史】

[欧米]
 自転車は18世紀後半から19世紀にかけてヨーロッパで発明され,改良が加えられ続けたが,おりからの欧米のスポーツ熱のなかで,きわめて自然に自転車による競走を生んだ。…

※「ツール・ド・フランス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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