トワダカワゲラ(英語表記)Scopura longa

改訂新版 世界大百科事典 「トワダカワゲラ」の意味・わかりやすい解説

トワダカワゲラ
Scopura longa

カワゲラ目トワダカワゲラ科の昆虫。まったく翅のない特異な形態のやや大型のカワゲラ。体長約20mm。解剖学的に原始的な特徴をもった種である。体は全体が光沢のある暗褐色で,胸節の両側はやや黄色みを帯びる。本州中部以北,北海道および朝鮮半島にのみ分布する。成虫は秋に出現する。本種は十和田湖畔で初めて採集されたのでこの名がつけられた。幼虫の形は成虫のそれとまったく変らないが,腹端に糸状鰓(しじようさい)が環状に配列しているので容易に成虫と区別できる。生きているときはこのえらを体内へ出し入れしている。水温10℃以下の小さな流れの石の間,または水中枯葉などの間にすんでいる。

 本種を氷期遺跡種とする説があるが,それに関しては定かでない。成虫出現期が秋であるためか,成虫の採集記録はきわめて少ない。近縁種にトワダカワゲラモドキS.proliferaがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トワダカワゲラ」の意味・わかりやすい解説

トワダカワゲラ
とわだかわげら / 十和田襀翅
[学] Scopura longa

昆虫綱カワゲラ目トワダカワゲラ科に属する昆虫。北半球に分布するカワゲラ類のなかでもっとも原始的な形質をもつグループの一つである。本州中部地方以北、北海道および朝鮮半島に分布する。体長20~25ミリメートル前後で、体色は光沢のある褐色。体は円筒形で、前胸は幅広く、前後の両隅角は突出する。はねはなく、頭部には単眼をもたない。生息場所は、幼虫がすむ川の岸辺付近の湿った落ち葉の間などである。

 幼虫は成虫に似ているが、腹端、正確には第九腹節と第10腹節の間に、糸状のえらが環状に配列しているので成虫と容易に区別できる。幼虫の生息場所は水温10℃前後の冷たい細流で、羽化は秋である。近似種トワダカワゲラモドキS. proliferaが、茨城と福島の両県境の山間部および佐渡島に分布する。

[川合禎次]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トワダカワゲラ」の意味・わかりやすい解説

トワダカワゲラ
Scopura longa

カワゲラ目トワダカワゲラ科。カワゲラ類のなかでも原始的な種で,1属で1科を形成する。体長 20~23mm。体は細長く,前胸は四角形で前後両角が鋭く突出する。全体が光沢のある褐色であるが,前頭部と胸部両側縁は黄色である。翅はない。腹端に2本の糸状の尾毛があり,幼虫ではその基部を取巻く気管鰓がある。幼虫と成虫はこの点でのみ区別される。山地の渓流付近の石下にすみ,成虫は秋に羽化する。本州 (東北地方) に産する。近似種が日本に3種,朝鮮半島に1種生息する。

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