羽化(読み)ウカ(その他表記)emergence
éclosion[フランス]

デジタル大辞泉 「羽化」の意味・読み・例文・類語

う‐か〔‐クワ〕【羽化】

[名](スル)
昆虫が、さなぎ幼虫から、成虫になること。→蛹化ようか
羽化登仙うかとうせん」に同じ。
[類語]脱皮もぬけ抜け殻蛹化ようか

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精選版 日本国語大辞典 「羽化」の意味・読み・例文・類語

う‐か‥クヮ【羽化】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 昆虫が、さなぎから出て、成虫になること。
    1. [初出の実例]「蜻蛉は水蠆の羽化せる者なり」(出典:小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉一)
    2. [その他の文献]〔捜神記〕
  3. 人のからだに羽が生えて仙人となること。羽化登仙
    1. [初出の実例]「一筵先達。得羽化於鳳掖之雲」(出典:本朝文粋(1060頃)一三・勧学院仏名廻文〈慶滋保胤〉)
    2. [その他の文献]〔晉書‐許邁伝〕
  4. ( 比喩的に ) 事物に羽が生えて飛んでいくこと。
    1. [初出の実例]「余貧不書。偶有購得早已羽化去」(出典:五山堂詩話(1807‐16)一)
  5. 羽林(うりん)近衛府)の武官となること。
    1. [初出の実例]「彼羽化を得て天闕(てんけつ)に遊びにし八座の莚、家門の塵を打払ひ」(出典:海道記(1223頃)逆川より鎌倉)

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改訂新版 世界大百科事典 「羽化」の意味・わかりやすい解説

羽化 (うか)
emergence
éclosion[フランス]

さなぎ(完全変態昆虫)あるいは終齢若虫(不完全変態昆虫)のクチクラから成虫が脱出することを羽化という。一般に,蛹殻(ようかく)中の成虫はまず空気をのみ込んで体積増し腹部を収縮し体液を頭部・胸部へ送り込む。この圧力でさなぎの胸部背面が裂け,成虫は羽出し,その後体液を翅脈(しみやく)に送って羽を伸展する。羽化の様相は昆虫の生活環境,とくに蛹化場所により種々異なる。繭の中で蛹化する昆虫では,蛹殻から脱出したのち,繭から抜け出さねばならない。陸生昆虫の多くは,機械的な匍匐(ほふく)運動で脱出するが,蚕のような硬い繭の中で蛹化する種ではいくつかの生化学的方法がとられる。シャチホコガ科のガは,水酸化カリウムを含む分泌液で,カイコタンパク質分解酵素を含む分泌液で繭を溶かす。ヤママユガ科の成虫は,口器の外葉にタンパク質分解酵素の結晶を蓄え,繭の内表面になすりつけるが,このとき下唇腺から分泌される緩衝液で結晶を溶解し繭を溶かす。これは,酵素が自己の体を溶かすことを防ぐ機構と考えられている。また,さなぎの大あごを成虫の筋肉でうごかし,繭を食いやぶるものや,さなぎの前端に,クチクラでできた鋭利な刃を備えて繭を切り裂く種もある。

 水中で蛹化する種が羽化して空中(水上)へ出る場合には種々の方法がとられる。双翅目アミカ科の成虫は,蛹殻中で羽がのび,羽化前にさなぎは浮上し,ただちに脱出して飛翔(ひしよう)する。水中で羽化するブユの仲間は空気を蛹殻と成虫の間に送り込んで気胞をつくり,この中へ羽化し,気胞が浮上したのち空中へ脱出する。トビケラのある種は水中で繭内に蛹化し,羽化直前に,さなぎの大あごで繭をやぶりさなぎのまま水中にはい出て羽化する。また別の種のトビケラでは,さなぎの中脚を櫂(かい)として用い,水中を遊泳し,はい上がったのち,地上で羽化する。カゲロウ目の羽化は昆虫の中でも特異で,2回の羽化を行う。

 羽化行動は鱗翅目でよく研究されていて,脳から分泌される羽化ホルモンが神経系に作用して解発される。やがて,成虫は少しはい上がって静止する。静止2~3分後にパーシコンというホルモンが分泌され虫体が着色・硬化して,完成した成虫となる。羽化の時機は外界の刺激により決定されることが多い。羽化の季節をきめる要因としては,日長や温度があり,とくに休眠する種では重要な情報となっている。さらに羽化は1日のある一定の時間帯におきることが多く,その時刻は昼・夜の概日リズムによってきまる。羽化は通常,夜間から早朝にかけておき,これは羽化直後,成虫が静止している間,捕食者から身を守るためと考えられている。羽化はふつう,雄のほうが雌より少し早めにおき,このため,交尾の機会が増す。特に雌が終生海中生活をするウミユスリカでは,海面上に浮上した雌に飛翔中の雄が交尾するため,雄の雌に先立つ羽化は種の存続に必須なものである。
昆虫
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普及版 字通 「羽化」の読み・字形・画数・意味

【羽化】うか(くわ)

仙人となる。宋・軾〔赤壁の賦〕乎として、に憑(よ)り風にして、其の止(とど)まるを知らざるが如く、飄飄乎として、世を(わす)れて獨立し、して登するが如し。

字通「羽」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「羽化」の意味・わかりやすい解説

羽化
うか

昆虫類が成育して蛹(さなぎ)や幼虫から、成虫になることをいう。たとえば、カイコなどが繭の中で蛹になったのち脱皮してガ(成虫)になることや、トンボの幼虫(ヤゴ)が成虫になることである。羽化は前胸腺(ぜんきょうせん)ホルモンの影響でおこるが、無翅(むし)類(シミ類、トビムシ類など)を除いて羽化後は脱皮をしない。羽化するときは、空気を吸い込み、腹部を細めて体液を胸部に集め、外皮に圧力をかける。すると胸背部中央の外皮が縦に裂け、成虫はここから脱出するが、チョウ類やハエ類などではあらかじめ裂開線が蛹皮(ようひ)にある。脱皮直後の成虫は、体液の圧力ではねが急速に伸張し、色づいて体皮とともに硬化する。幼虫が繭をつくって蛹になるものでは、頭の突起や大あごで繭を破って脱出するもの(甲虫類の一部など)、液で繭を軟化させてそこから脱出するもの(カイコなど)がある。

[中根猛彦]

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百科事典マイペディア 「羽化」の意味・わかりやすい解説

羽化【うか】

昆虫の最終齢の若虫(幼虫)または蛹(さなぎ)が脱皮して成虫が現れること。一般に蛹殻(ようかく)の中の成虫は空気をのみ込んで体積を増し,頭胸部へ体液を送り込んだ圧力で胸部背面の殻を破って脱出し,その後,体液を翅脈(しみゃく)に送って羽を伸ばす。羽化の時機は日長や温度などの外的条件によって決まり,エクジソンが血中に放出されることによって生じる。

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世界大百科事典(旧版)内の羽化の言及

【とげ(棘)】より

…形態上の単位ではなく,外見上の類似でまとめた呼名だからいろいろのものが含まれる。植物体の表面に突出する付属物のうち,表皮起源で軟らかいものを毛状体emergenceと呼ぶが,毛状体と総称される毛や鱗片のうちでも,ヘゴの葉柄基部につく鱗片の基部のように,細胞が数列並び,壁が肥厚して硬くなったものはとげと呼ばれる。毛状体以外の突出物で硬い組織をもつものを一般にとげというが,このうちには形態上の単位としてはさまざまのものが含まれている。…

※「羽化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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