日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドクササコ」の意味・わかりやすい解説
ドクササコ
どくささこ / 毒笹子
[学] Clitocybe acromelalga Ichimura
担子菌類、マツタケ目キシメジ科の毒キノコ。別名ヤブシメジ、ヤケドタケ。傘は径3~8センチメートル、中央が深くくぼんだ漏斗(ろうと)形で、橙褐色(とうかっしょく)ないし茶褐色。肉は白く無味無臭。ひだは黄白色で密に並び、茎に垂生する。茎は長さ2~5センチメートル、太さ3~8ミリメートルで、傘と同色。縦に裂けやすい。胞子は広楕円(こうだえん)形ないし卵形で、2.5~4マイクロメートル×1.5~3マイクロメートル。10月、竹林やささやぶに多いが、雑木林にも群生する。日本特産で東北、北陸、近畿地方に分布する。なお、関東、東海地方では記録がなかったが、1982年、群馬県で発見された。中毒症状は特異で、食後4~5日後に発病、手足の指先が赤く腫(は)れて焼け火箸(ひばし)で刺すような激痛が1か月以上も続く。適確な治療法はまだ確立していないが、冷水に手足を浸して痛みを和らげ、ニコチン酸を20~150ミリグラム投与するのが有効という。ドクササコは、色には毒々しさがなく、また、形も食用キノコに多いタイプのうえ、潜伏期間が長いということから、初めはキノコ中毒とは気づかれず、季節的に発生する一種の神経痛と誤解されてきた。最近は、キノコ中毒の多発地方では県単位のキノコ図鑑が出版され、毒茸(どくたけ)に対する教育が進んできたので、ドクササコの中毒例も少なくなったが、油断はできない。
[今関六也]