タケが優占する林。タケは同類のササを含めて世界で約80属、1030種余りが分類され、とくにアジア、ラテンアメリカなどに広く分布し、また栽培されている竹林も増えている。タケは、建築材、農用資材、パルプ材、炭材、工芸材など用途も多く、タケノコが食用となる種も多い。九州地方にはモウソウチクやマダケ林が多く、関東から東北地方にかけてはハチクやメダケ林が多い。樹木の幹にあたる部位をタケでは稈(かん)という。タケとササの違いは、稈の成長後、早期にタケの皮が離脱するものをタケ、稈の成長後も離脱しないものをササとしており、和名だけからは判断しにくい。また一般にタケは高く森林状になるが、ササは低く草原状になることが多い。タケ・ササは毎年新しい稈を地下茎からタケノコとして発生させるが、地上に出た稈は数か月で成長を終え、その後は伸びも太りもしない。
竹林では毎年タケノコが発生するため、竹林を放置すると過密状態となり、やがてタケノコの発生本数が減り、細い稈しか得られなくなるのと同時に生産量も低下するので、適当量を伐採して本数密度を管理することがたいせつである。1980年代あたりから林業の不振に加えて、海外からの安いタケノコや竹細工の輸入が増えたため、里山では手入れ不足の竹林が増え、竹林面積も拡大している。2000年代に写した航空写真と1970年代辺りのそれを比較すると竹林の面積は1.5倍以上増えている。地目上は畑、果樹園、林地になっているところでも竹林に変化しているところが急増しているのである。竹林は生物多様性に乏しく、水土保全的にも不安な点があるので、竹林の拡大は抑えなければならない。そのためには農山村の再生を図り、竹林の利用、手入れが重要である。
[蜂屋欣二・藤森隆郎]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
タケ類から成る林。日本の竹林の大部分はマダケとモウソウチクである。マダケの栽培北限は青森県,モウソウチクは函館付近とされている。樹木の造林のように山地に植栽するというよりは,農家の近くや里山丘陵地におもに造成され,経営管理されてきた。竹材は農業用資材,日用のさまざまの器具類,家具や建築のための用材など広く多様な用途をもち,たけのこ,とくにモウソウチクのそれは食用として広く親しまれている。個々のタケ稈(かん)は10年以上の寿命をもつから,竹林を放置すると古いタケが多くなって新しいタケの発生が少なくなる。したがって,古いタケを切って新しいタケの発生を促すように管理され,たけのこ用の竹林では客土や施肥が行われ,また装飾用材として四角竹や斑入りの竹材がつくられている。このような栽培された竹林は日本,中国,台湾が主である。日本での栽培の歴史は古いが,モウソウチクは中国原産ともいわれ,日本への渡来は15世紀とも17世紀ともいわれている。タケ類の分布は東南アジアから台湾,中国,韓国,日本など東アジアとアフリカに多い。日本のタケは地下茎をのばし,その節からたけのこを発生させ,個々のタケ稈はそれぞれに独立の個体のような形をとるのに対し,熱帯に自生する多様なタケの多くは株立ち型である。熱帯では農家の屋敷まわりに植栽するほか,森林伐採跡の二次植生として広く天然生の竹林が発達することがあり,竹材の利用が行われている。タケからの製紙(竹紙(ちくし))は古く中国で行われてきたが,東南アジアではタケ類のパルプ利用が進められている。
→タケ
執筆者:堤 利夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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